2005年8月11日(木)「しんぶん赤旗」
イラク 憲法起草作業期限迫る
国のあり方で各派対立
米国の圧力に国民反発
【カイロ=小泉大介】イラクの政治プロセスの重要な節目である恒久憲法草案の議会承認の期限が十五日に迫るなか、基本点に関する各派の対立が続いています。国づくりでの対立解消より、期限までの起草作業完了を求める米国の圧力には国民が反発しています。
憲法起草委員会での対立を政治的に解決することをめざし、全国の政党代表者らによる協議が七日、首都バグダッドで始まり、九日に二回目がおこなわれました。起草委員会が十二日に最終草案を暫定国民議会に提出し、十五日までに同議会が承認、十月半ばに国民投票にかける日程となっています。
報道によれば、不一致点は十八項目にのぼります。なかでも連邦制の是非やイスラム教と国家の関係など国のあり方をめぐる根本問題で各宗教・宗派、民族が対立しています。国名、公用語、女性の権利などでも不一致点が残されています。
連邦制の導入を主張しているのは、少数民族クルド人やイスラム教シーア派の一部勢力。一九九一年の湾岸戦争以降、北部で自治政府を形成してきたクルド人は、連邦制・自治権の明記と民兵組織の維持を求めています。北部の油田地帯キルクークをクルド人のものとすることも主張しています。
これにたいしイスラム教スンニ派勢力は国の分裂をもたらすとして早急な連邦制の導入に強く反発しています。暫定国民議会のハムダン議員は「国が占領下にあり、治安が不安定ななかで連邦制を実施するのは困難だ」とのべ、連邦制導入は将来、正式な議会と政府が誕生した段階で議論すべきだと主張。他のスンニ派の政党指導者や憲法起草委員会メンバーもほぼ同様の立場です。
イスラム教と国家との関係では、イラクのシーア派最高権威シスタニ師が五日、同派のジャファリ移行政府首相と会談した際、イスラム教を法律の基本理念とするよう要望したとされます。クルド勢力とスンニ派は、イスラム教はあくまで法の理念の一つであるとの立場です。
一方、米国は、憲法起草が遅れてイラク支配に影響が出ることを懸念し、期限を厳守するよう圧力をかけています。米国のハリルザド駐イラク大使は各政党代表者に繰り返し妥協を求めました。
憲法起草委員会のオスマン委員(クルド人代表)は「米英の強力な圧力がある」と告白しました。国民の間では「国づくりの根本問題の不一致を無理にとりつくろえば、後で矛盾が噴き出すのは明らかだ」「このままでは米国の憲法になってしまう」などの声があがっています。