2005年8月11日(木)「しんぶん赤旗」
チリ 任命議員制度廃止へ
軍政時代の残り物 一掃
16日憲法改正
【メキシコ市=松島良尚】南米チリのピノチェト軍事政権時代に制定された憲法の改正が十六日に予定されている上下両院総会で正式に承認されます。軍最高司令官を上院議員に任命する制度の廃止などで軍政時代の残り物を一掃します。
改正は五十八項目。軍司令官を解任する権限を大統領に付与。大統領任期は六年から四年に短縮します。
ラゴス大統領は上院が満場一致で改正を可決した先月十五日、「ようやく民政への移行期が完了した」と強調しました。かつて改正に反対だった野党のロメロ上院議長も、「この偉大な合意によって移行が終わった」とのべました。
一九八〇年に制定された同国憲法は、連続六年在職した大統領に終身上院議員の資格を与えたほか、陸海空軍各司令官、国家警察長官、最高裁判事(二人)、閣僚、大学長、監査院長の各経験者から上院議員を任命すると定めました。
大統領が任命できるのは閣僚と大学長からの議員だけで、軍司令官からの任命は国家安全保障評議会が行います。上院四十八議席のうち任命議員が九人を占め、終身議員はピノチェト元大統領が二〇〇二年に辞任したので、現在はフレイ前大統領だけです。
任命議員の枠があるため、民政移管後も改憲に反対する右派が上院で有利になり、事実上憲法改正ができませんでした。実際、軍・警察組織の改革など民主化のための憲法改正はこれまで実現しませんでした。
民主化のために任命議員制度の廃止が必要だとする世論の盛り上がりでようやく右派が合意しました。この制度が民主主義の見地から国内外で通用しないのが明白な中、これにしがみついていれば政治勢力として不利になると判断したためといわれます。人権弾圧や不正蓄財などの問題を抱えるピノチェトから右派が距離を置く傾向も近年強まっていました。