2005年8月11日(木)「しんぶん赤旗」
ここに野党あり オール与党国会と共産党
郵政民営化法案
一番大事な問題突いた
郵政民営化法案の否決・廃案、小泉純一郎首相の「ゆきづまり解散」で幕を閉じた通常国会。自民、民主の「二大政党制づくり」のもとで“オール与党”化がすすむ一方で鮮明になったものがあります。いつでも国民の立場を貫く「たしかな野党」日本共産党の役割と値打ちです。200日に及んだ国会を振り返ります。
■「やっとわかった」反響続々
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「公社のままなら千三百八十三億円の黒字、民営化会社なら六百億円の赤字。政府の試算でも、民営化すればジリ貧になるではないか」――六月六日の衆院郵政民営化特別委員会で、日本共産党の佐々木憲昭議員がただしました。答弁に立った竹中平蔵郵政民営化担当相は、政府自身の試算(骨格経営試算)でも、完全民営化後の二〇一六年の郵便貯金銀行(民営化会社)が大赤字になることをしぶしぶ認めました。
テレビ中継でこのやりとりを見た視聴者からは、「いままで郵政民営化に賛成だったが、やっとわかった。とんでもない法案だ」という反響が続々。国民にとって「百害あって一利なし」の実態を共産党の質問で初めて知り、納得したという人は少なくありません。
衆参両院で九人ずつという日本共産党国会議員団。質問時間などで制約を受けながらも、「郵政民営化は国民生活に何をもたらすのか」という角度から、問題の本質を突き論戦をリードしてきました。
大きな論点となったのは、郵便局の金融サービス維持の問題。庶民にとって身近な金融窓口であり、高齢化社会がすすむなか、ますます必要となる郵便局を民間まかせにしたら、いったいどんなことになるかです。
民間の銀行は、一九九七年度から二〇〇三年度の間に、四千もの店舗を減らしています(グラフ)。身近な郵便局が次々なくなるのではないかという日本共産党の塩川鉄也衆院議員の追及に、小泉首相は「統廃合もありうる」と認めました。
――収益至上主義で、小口預金者などは客扱いしない民間銀行と同じやり方を郵便貯金に持ち込むのが民営化であり、高い手数料のために口座がつくれなくなる「金融排除」が深刻になる。
――小泉内閣の本当のねらいが、庶民のかけがえのない郵貯・簡保の資金を日米の銀行・保険業界の食い物にさせることにあるのは、米国政府の文書などから明らか。
日本共産党議員の的を射た質問が民営化の論拠を突き崩していきました。
■「反対」言う民主党だが…
この国会で民主党が郵政民営化法案にどういう態度をとるかは、一つの注目点でした。
岡田克也代表は昨年の臨時国会と今年の通常国会の代表質問で、「郵貯、簡保については民間でもできることであり、将来的には民営化が本筋」と表明。党内の反発で結局、政府案への反対を決めたものの、郵政公社後の郵政事業のあり方には「あらゆる選択肢を否定するものではない」(「郵政改革に関する考え方」)と将来の民営化を否定しませんでした。
「民営化には賛成」だが、「政府案は改革の名に値しない」という民主党の論法にマスメディアも「いくら廃案を叫んでも、力がこもるはずもない」(「朝日」六月十七日付社説)と酷評しました。
それでも民主党は審議入りにあたり「法案に瑕疵(かし)がある」と審議拒否戦術に出るなど対決姿勢の演出に腐心しました。しかし法案の不備をただすなら審議の場で質問するのが筋です。
ところが審議が重ねられ、日本共産党の論戦で法案の暮らしに及ぼす悪影響が鮮明になるにつれ、民主党の反対論は変化していきました。
三月一日の衆院予算委員会では「郵貯と簡保の規模をそのままにして株式会社になったから民営化だといっても、実はちっとも民営化ではない」とのべていた五十嵐文彦「次の内閣」総務相。七月四日の郵政特別委での総括質疑では「政府の郵政民営化案は『百害あって一利なし』」と日本共産党の主張とまったく同じ表現で法案を批判しました。
参院での審議では、日本共産党の大門実紀史議員が指摘した郵政民営化準備室と米国関係者の接触ぶりや「金融弱者」排除の問題、米政府の対日要求を、同じ論点と材料で取り上げる民主党の質問がみられました。
■否決・廃案の意味は重い
衆院で百時間余、参院で八十時間――。長時間にわたる国会審議と、参考人質疑、地方公聴会を通じて数多くの関係者・識者、地方の意見をきいたうえでの法案否決。国会が下した「廃案」のもつ意味は極めて重いものです。
七月十五日の参院郵政民営化特別委員会。日本共産党の小池晃政策委員長が、庶民向けサービス切り捨てを進める大銀行の実態を示し、民営化で郵貯など郵便局のサービスが削られると追及し、大きな反響を呼びました。
その質問後、自民党の賛成派議員の一人が小池氏にこう語りかけてきました。
「一番大事な問題を突いたいい質問だった。われわれの言えないことを質問してくれた。銀行が問題の本質だ」
与党の賛成派議員までが疑問を呈した法案――日本共産党の論戦は、否決・廃案への流れに水路を開く役割を果たしました。