2005年8月6日(土)「しんぶん赤旗」

主張

原爆被爆60年

核兵器廃絶の転機にしよう


 一九四五年八月六日、九日―アメリカによる広島、長崎への原子爆弾投下から六十年がたちます。

 この世の地獄を生きのびた被爆者は、幾多の苦しみをのりこえ、「ふたたび被爆者をつくるな」と訴えてきました。人間としての尊厳をもった死すら許さず、人間を根本から傷つける人間否定の兵器にたいし、自らの生をもって抗するその叫びは、多くの人々の心を揺さぶり、反核平和の大きな流れとなって、幾たびも核戦争の危険を抑えてきました。

■熱気あふれる討論

 しかし、その悲願が実現されないまま、被爆者は齢(よわい)を重ね、平均年齢は七十三歳に達しています。さらに、核兵器廃絶の「明確な約束」の実行をかたくなに拒むアメリカが、核兵器の使用を公然と方針にかかげ、イラクへの攻撃と侵略をすすめるなど、深刻な脅威がたちあらわれているもとで、戦争も核兵器もない世界をめざす、新たな決意が確固としてひろがりつつあります。

 「高らかに全世界に訴えます。人類は私たちの犠牲と苦難をまたとふたたび繰り返してはなりません」(日本原水爆被害者団体協議会「世界への挨拶(あいさつ)」一九五六年八月)と声をあげ、歩みをはじめた被爆者たちは、今、「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」の言葉を「いまこそ人類共通の思想に」と、その決意をあらためて世界に発信しました(「ふたたび世界への挨拶」)。

 「核兵器のない平和で公正な世界へ行動と共同を」をテーマに開かれた原水爆禁止世界大会・国際会議(二―四日)には、この被爆者の訴えに応えるかのように、マレーシア、メキシコ、スウェーデン、ベトナム、キューバ、アラブ連盟の政府代表をふくめ、海外から史上最高の二十九カ国、二百六十四人が参加し、熱気あふれる討論をくりひろげました。

 国際会議宣言は、先制攻撃戦略をとるブッシュ政権などの逆流は根強いが、反核平和が世界の圧倒的多数派であり、運動が大きく前進していることを確信とし、被爆六十周年を「核兵器のない平和で公正な世界へ地球的流れを圧倒的に強める転機としよう」と、世界的な共同と行動を大きく発展させることを、力強くよびかけました。

 世界大会に先立って行われた、世界の科学者が集うパグウォッシュ会議は、「一人の人間として、人間に向かって」行動を訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」(一九五五年)を想起して、今の「脅威に立ち向かおうではないか」と訴えました。「核兵器廃絶のための緊急行動」にとりくむ「平和市長会議」にも、二十五カ国九十九都市と全米市長会議などから二百七十五人が参加しました。

 新たな決意を受け継ぐ、運動の新たな担い手も注目されます。

■若いエネルギーが結集

 今年の世界大会には、海外からも、百三十人のフランス青年が参加したのをはじめ、内外の若いエネルギーがかつてない規模で結集しました。彼らが自分たちの手でつくりあげた「世界青年のつどい」は、三千人が参加し、自らの行動で歴史を刻もうとする各国での活動を交流、若い力の国際連帯に新たな一ページを加えるものとなりました。

 被爆国であり、憲法第九条をもつ日本のすべての国民のみなさんに、被爆者の願いを真摯(しんし)にうけとめ、核兵器の脅威のない、新しい世界をきりひらくために、未来を生きる世代とともに行動することをよびかけます。


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