2005年8月5日(金)「しんぶん赤旗」

鼓動

明徳義塾野球部の不祥事

見過ごせない二つの問題


 今回の事件からは、見過ごせない二つの問題が見えてきます。

 一つは、明徳義塾・馬淵史郎監督が、選手の喫煙や暴力行為を隠ぺいしてしまった過ちです。

 暴力事件は、選手の保護者から地方大会の前日に報告があり、喫煙にいたってはその1週間前、選手の自発的な申告がありながら、いずれも内部処理したといいます。

 学生野球は「教育の一環」とされ、同憲章には、野球を通じて「フェアな精神を体得すること」とあります。

 同監督は公表するか否か、悩んだのかもしれません。しかし、この選択は、「教育」とは対極のものであり、選手たちに「フェアな精神」を見失わせるものです。

 日本高野連の田名部和裕参事は「地方大会前に問題をきちんと報告していれば、当該選手を除いて大会出場も可能だった」と語っています。馬淵監督の取った判断が、過ちに過ちを重ね、罪のない選手をも巻き込むことになった側面は否定できません。

 もう一つは、事件を隠すことで、解決の機会を逸してしまった罪です。

 選手のいじめや暴力行為は、指導者や学校の姿勢にも大きな原因があることは、多くの事例が示しています。

 指導者が、勝利に目を奪われることで、選手を厳しく管理する、激しいレギュラー争いを強いる、実力のない子には活躍の場を与えないことなどで、ゆがんだ人間関係をつくっています。指導者が、暴力を肯定し、軍隊的で非民主的な上下関係を生むケースも多い。4年前、PL学園で下級生がバットで殴られた事件では、監督が見て見ぬふりをしていたことが明らかになっています。

 学校側の問題もあります。私学の中には、部活動を学校経営に利用し、過大な期待をかける、生徒を特別扱いしているところも多い。明徳義塾でも、こうした点から真しな原因の究明と反省が求められていたはずです。

 暴力やいじめは、野球だけでなく、日本の部活動に根深く巣くっています。そのことで、どれだけの子どもたちが悩み、苦しみ、傷ついてきたか…。高野連は痛恨の事件をきっかけに、これらの問題解決に本格的なメスを入れるときではないでしょうか。

 (和泉民郎)


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