2005年8月5日(金)「しんぶん赤旗」
韓国大統領
「地域主義」克服掲げる
与野党の大連立を提案
韓国の盧武鉉大統領が最大野党ハンナラ党に対し与党「開かれたウリ党」との「大連立」を提案し、波紋を広げています。大統領が掲げる目標は「地域主義」解消。七月二十九日の記者会見で、政党基盤が特定地域に偏っているために民意を国政に反映できない「地域主義」の解消を政権最大の課題だと言明。与党が国会で過半数に届かず、選挙法改定は与党単独ではできないため、「国政の最大課題」である政治改革という一致点での大連立を呼び掛けました。(面川誠)
二〇〇二年十二月の大統領選挙で、与党の盧候補は南西部の全羅道地方で92・3%を得票、野党ハンナラ党の李会昌候補はわずか4・9%。慶尚道地方では李候補68・6%に対し、盧候補は25・4%。〇四年四月の総選挙では、大統領弾劾に反対する世論が沸き起こり、ハンナラ党が地盤の慶尚道でも得票率を落としたにもかかわらず、与党の獲得議席は慶尚道でわずか三議席。一方のハンナラ党は全羅道で一議席も取れませんでした。
「候補者さえ出せば当選する」。盧大統領は、極端な地域主義が政策に基づく政党の成立や政治的な信念に立った政治活動を困難にし、リベラル色の強いウリ党にも、保守的なハンナラ党にも、内部にさまざまな政治的信条の人が混在していると指摘しました。
現在の国会議員選挙制度は、定数二百九十九議席のうち小選挙区が二百四十三、全国一区の比例代表が五十六。ウリ党は百四十六、ハンナラ党は百二十五。合わせれば全議席の九割を占めます。大統領は地域主義解消の第一歩として、与野党「大連立」のもと、選挙制度を広域別の比例代表制かドイツ型の小選挙区・比例代表併用制へ転換することを呼びかけました。
大統領は二十九日の会見で、韓国民が自分を大統領に選んだ理由を「韓国社会に必要な本質的な改革を原則通りに推し進めるだろうと期待して私を支持したのだ」と強調。南北関係の改善、自主的な外交政策、不正腐敗・政経癒着の根絶、地域主義の解消を課題に挙げました。
また、歴史を振り返れば政治指導層の分裂や不正腐敗が植民地支配を招き、民主主義の実現を阻んできたと指摘。「大連立」提案が、盧政権の進めてきた歴史の真相究明事業と不可分のものであることを明確にしました。
今のところハンナラ党は大統領提案を「実現可能性ゼロであり、反応する価値もない」と拒否、野党分裂工作だと警戒を示しています。一方のウリ党は「わが党は地域主義を克服するためにつくった政党」だとして受け入れを表明しました。
▼地域主義 一九八七年まで続いた軍事政権が権力層の出身地域である慶尚道地方に投資を集中させたことから地域格差が深刻化。八〇年に全羅道地方の光州市で民主化運動が軍政によって弾圧され多数の死傷者を出した事件は、互いの地域に対する憎悪感まで植え付けました。九〇年、ともに慶尚道を地盤とする軍政後継政党と一部の民主化運動の後継政党が、政策よりも権力維持を目的に合併(三党合党)したことは、地域主義の固着を決定付けました。