2005年8月5日(金)「しんぶん赤旗」

主張

地域別出生率

カギは人間らしい働き方に


 一人の女性が産む子どもの平均数である合計特殊出生率は全国的には一・二九です。しかし、都道府県別にみると、最も高い沖縄県が一・七二、最も低い東京都が一・〇一と大きな格差があります。出生率が下がり始める前の一九七〇年代はじめごろには地域による差は小さく、いま出生率が低い埼玉、千葉、神奈川などの各県は三十年前には比較的高い地域でした。今年の厚生労働白書(二〇〇五年版、七月二十九日公表)が、出生率の地域格差の社会的要因を探っています。

■長時間労働と出生率

 白書は、出生率の比較的高い九州や東北などの地域では、三人以上の子どもを産む人が多く、比較的出生率の低い北海道や関東に比べ、結婚後の出生力が高いことを指摘しています。そのなかで結婚後の出生行動に影響を与えるマイナス要因として、男性の通勤時間および仕事時間の長さが浮かび上がってきました。

 白書は、大都市部では、二十五―三十九歳の男性就業者のうち四人に一人が、労働時間が週六十時間を超えている実態をあげ、「長時間労働者の割合が高い地域は、出生率が低い傾向にある」とのべています。

 週六十時間以上の労働といえば、週五日、毎日十二時間以上働き、家には寝に帰るだけという状況です。

 国会で、日本共産党議員の質問に、政府も、南関東など具体的地域をあげ、「長時間労働者の比率が高い地域ほど出生率が低いという相関関係もみられる」「時間外労働の縮減、有給休暇の取得が有意義」と答えています(二〇〇三年六月十一日、衆院内閣委員会)。

 長時間労働は、大都市部だけの問題ではありません。白書によると、最も少ない島根県でも、七人に一人が、週六十時間以上の長時間労働をしています。地域にかかわらず、日本全国で長時間労働が野放しにされています。

 政府は、少子化対策で、十年後には男性の育児への参加時間を現在の二―三倍にあげて「他の先進国並みに」することをかかげました。国際比較をすると、男性の育児・家事にかかわる時間が多いほど出生率が高いという傾向がみられるからです。

 長時間労働についても、出生率低下の要因であることがはっきりとしました。家族そろっての夕食や長期のバカンスが当たり前になるよう、「先進国並み」をめざすべきです。

 女性の就労でも、出生率の高い地域ほど、結婚・出産後も共働きし、正規で働く割合が多い一方、長時間労働者が少ない傾向にある、と指摘している点も注目されます。

 白書について、「出生率を高めるには『夫の帰宅時間を早くし、妻が正規雇用に就く』ことがカギになるとも読める内容」と書いているマスメディアもあります。

■共産党の提案を裏づける

 日本共産党は、少子化の根本要因が「働くこと」と「子どもを産み育てること」との矛盾の広がりにあると指摘して、解決のためには、保育体制の拡充や子育て支援の充実とともに「労働、雇用問題に正面からメスを入れる必要がある」(二〇〇〇年十一月の第二十二回大会)として政策を提起。その柱は(1)男女がともに子育てに責任を果たせるように職場の労働環境を全体として改善すること(2)雇用に関するすべての面で男女平等を貫くこと(3)失業や不安定雇用の解決にとりくみ男女ともに安定した雇用を保障すること―です。

 厚生労働白書の指摘は、こうした提案の重要性を裏付けています。


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