2005年8月4日(木)「しんぶん赤旗」

常任理事国入り行き詰まる日本

アジアの友人わずか


 日本政府の“悲願”である国連安保理常任理事国入りの問題が行き詰まっています。常任理事国入りを目指す四カ国グループ(G4=日本、ドイツ、インド、ブラジル)の国連総会決議案と、アフリカ連合(AU)の決議案一本化を協議するAU首脳会議が四日に開かれますが、予断を許さない状況です。

■カネの力で脅し

 G4は七月六日、(1)安保理常任理事国を六カ国、非常任理事国を四カ国増やす(2)新常任理事国は拒否権を十五年間行使しない―などを柱とした安保理改革の「枠組み決議案」を国連総会に提出し、同月下旬までの採決を目標にしていました。

 国連総会での決議案可決には、加盟百九十一カ国の三分の二―百二十八カ国の賛成が必要です。ところが米国はG4案に一貫して反対。中国や韓国は、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に象徴される過去の侵略戦争への無反省などから日本の常任理事国入りに反対してきました。

 このため日本政府は五十三カ国が加盟するAUに的を絞り、「百二十八カ国の支持を得られれば(米国や中国も)反対はできない」(外務省)とし、アフリカ向けODA(政府開発援助)の倍増を発表するなど、多数派工作を進めてきました。

 ところがAUは七月十八日に独自の決議案を提出。G4は二十五日にAUとの外相会合を開催し、G4が非常任理事国の数などで譲歩することにより決議一本化の方向で「基本合意」しました。しかし、AU内部で一本化に異論を持つ国もあり、根深い対立が残っています。

 仮にAUとの一本化が実現しても、国連本部が五日から夏休みのため、採決は最短でも八月下旬です。

 焦燥感が強まる中、町村信孝外相は七月二十七日、国連本部の記者会見で、日本の常任理事国入りが実現しなかった場合、「国連への分担金を削減せよという世論が広がることは容易に想像できる」と発言。国連内では「脅しだ」との反発の声が上がり、状況はかえって悪化しました。

■戦争に反省なく

 カネの力とアフリカ諸国に頼らざるをえないのは、肝心のアジア近隣諸国でまったく支持が得られないためです。ここに日本が抱える根本問題があります。

 G4案の共同提案国は二十九カ国ですが、アジア諸国ではアフガニスタン、ブータン、モルジブのみ。日本との関係が強いASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国はゼロです。

 一方、G4の一員であるドイツの周辺国では、同国が過去に侵略した国々―フランスやポーランドなどを含む十三カ国が名を連ねています。ドイツと違い、過去の戦争に正面から向き合おうとしない日本政府。「日本には周辺国にごくわずかの友人しかいない」(独紙フランクフルター・ルントシャウ)との批判が出るのは当然です。

 七月下旬、ASEANと日中韓三国の外相会合がラオスの首都ビエンチャンで開かれましたが、常任理事国入り問題で奔走する町村外相は「多忙」を理由に欠席。「アジア軽視だ」との批判が相次ぎました。ASEAN外相会合は二十六日、「安保理拡大問題が、包括的な国連改革に関連する他の課題を後景に追いやっている」との声明を採択しました。

 常任理事国入り問題で「票読み」に熱中する日本政府は、貧困の克服などの課題で各国の要望にどれだけ耳を傾けてきたのか。過去の侵略戦争を反省し、アジア諸国と真の友好関係を築き、信頼をかちとる努力をどれだけしてきたのかが問われています。

 外務省内からは「常任理事国入りをめぐる一連の動きで日本と他国の本当の関係が見えてきた」との声も聞かれます。 (竹下岳)


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