2005年8月3日(水)「しんぶん赤旗」

防衛白書閣議了承

安保超える日米協力

地球的規模の「同盟」前面に


 大野功統防衛庁長官は二日の閣議で、二〇〇五年版「防衛白書」を報告し、了承されました。今回の白書は、昨年十二月に決定した新「防衛計画の大綱」を受けて初めて作成されたもの。日米の協力関係を「日米安保体制の下で行われるものに限定されず、アジア太平洋地域のみならず、世界における広範な課題を対象とした協力関係」と規定。日米安保条約の枠組みさえ超えた、地球的規模の「日米同盟」の強化を前面に押し出しました。

 その上で、白書は「国際的な安全保障環境の改善」のための「国際平和協力活動」として、イラクやインド洋への自衛隊派兵を例示。「防衛庁として、同活動の本来任務化など態勢の充実・強化に積極的に取り組んでいく」とし、海外派兵を自衛隊の「本来(主要)任務」に格上げするなど、イラク戦争に象徴される米国の先制攻撃の戦争に参戦する態勢づくりの方向を打ち出しました。

 同時に、現在進められている在日米軍再編に関する日米協議では、「国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組」などを念頭に置いて「自衛隊と米軍との間でどのような協力を行っていくべきか検討を行っている」とし、地球的規模での日米共同作戦態勢づくりの検討が進んでいることを明らかにしています。

 一方で白書は、中国の軍事動向を詳しく記述し、国防費が「17年連続で10%以上の伸び」を見せていることなどを指摘。中国と台湾との関係について、「台湾軍が効果的に戦略転換をしなければ、…軍事力の優勢は徐々に中国へ傾斜する」との台湾側の認識を紹介し、中国の「脅威」を強調しています。


■大義なき米戦略支える

防衛白書

 二〇〇五年版「防衛白書」は、日米の協力関係は「日米安保体制の下で行われるものに限定されない」とし、政府・防衛庁が進める地球的規模の日米共同作戦態勢づくりが、安保条約の条文からも説明のつかないものであることを自ら認めました。

 米軍と自衛隊の共同作戦について、安保条約上の建前は「日本防衛のため」です。小泉政権が、米軍支援のために進めてきたイラクやインド洋への自衛隊派兵は、安保条約のどこにも根拠がないものです。

 にもかかわらず、白書は、米軍支援のための海外派兵を自衛隊の「本来任務」にする考えまで強調しています。

 それを合理化するため持ち出しているのが、自衛隊の活動の目標に「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにすること」を掲げた新「防衛計画の大綱」です。白書は、同大綱の記述に力を入れています。地球規模で派兵し、米国中心の「有志連合」の一員として活動することが、回りまわって日本の平和につながるという理屈です。

 しかし、米国の先制攻撃戦略を支える「有志連合」路線が示したものは何か。

 イラク戦争は、国際的な反戦世論に包囲され、戦争の口実としたイラクの大量破壊兵器は、結局、発見できませんでした。今回の白書でも、昨年は強調していたイラクの大量破壊兵器問題について、一切触れることができません。

 イラクを軍事支配する米軍は、ファルージャなどで罪のない住民を殺りくし、国際的な非難を浴びています。米軍支配は、白書も「イラクの治安情勢は依然として予断を許さない」としているように、今なお泥沼状態です。

 白書が描く米戦略への追随路線は、大義なき米国の戦争に動員される道でしかありません。

□「中国脅威」あおる

 白書が、アジア太平洋情勢で警戒感を示したのが中国です。軍事動向の中で「海洋における活動」を詳述し、外洋進出を強調。前回に引き続き、台湾問題を「中国側から見れば、『国内問題』であるが、関係国から見れば、この地域の平和と安定を脅かしかねない安全保障問題」と位置付けました。しかし、「中国脅威」論をあおり、軍事的対応をアジアに持ち込もうとすることは、かえってアジアの平和を脅かすだけです。

 政府内からも「中国には、日本を侵略する意図も能力もない。中国とは、同じ方向に向かって走り、相手が追い越したときに、多少肩が触れあうかもしれないといったものだ」(高官)と、「中国脅威」論に首をかしげる声も出ています。 (田中一郎)


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