2005年8月2日(火)「しんぶん赤旗」
9条を全面改悪
自民が初の改憲条文案
「軍」を保持・戦争放棄削除も
自民党の新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は一日、「自衛軍を保持する」と明記するなど九条を全面改悪する内容の「新憲法第一次案」を発表しました。前文案については見送り、「国民の責務」などは、検討課題としています。自民党が条文化した改憲案を発表するのは初めて。十一月に公表する改憲草案に向け大詰めの作業を続けることになります。
自民党案では、九条二項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除。新たに「侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する」と明記しています。また、自衛軍が「自衛」活動のほか、「国際貢献」や「秩序維持」の活動を行うと規定。戦争を放棄した現行憲法の平和主義を全面的に否定しています。
九条一項(戦争放棄)についても、「戦争放棄」という表現そのものをタイトルからも条文からも削除し、「戦争その他の武力の行使…を永久に行わない」と書き換えています。司法の項目で、「軍事裁判所を設置する」と規定しています。これは、軍の規律維持や逃亡兵の処刑など軍刑法的な裁判を念頭に置いたものです。
国民の権利については、「自由及び権利には責任が伴う」「公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責任を負う」と規定し、内閣が定める政令でも「法律の委任」があれば権利制限できる仕組みです。「公益や公の秩序」が個人の人権より優先するという考えを打ち出しています。
信教の自由(二〇条)に関連し、国の宗教的活動の禁止については、「社会的儀礼の範囲内にある場合」を除外しています。
国会については、政党の項目を新設。国が「その健全な発展に努めなければならない」として、政党の活動に国が介入する余地をつくりました。また、地方自治については、住民自治の考えを後退させています。
改正の要件を、衆参各議院の三分の二以上の賛成から、過半数の賛成に緩和し、今後の改憲を容易にすることを狙っています。
■自民・新憲法第1次案 9条改悪のポイント
●第2章「戦争の放棄」のタイトルを「安全保障」に書き換える
●9条1項の「戦争放棄」の文言を削り、「行わない」に書き換える
●9条2項(戦力不保持、交戦権の否認)を削除
●自衛軍の項目を新設 (1)「我が国を防衛」する「自衛軍」を保持(2)国際協調の活動(海外派兵)、「公共の秩序の維持」(治安出動)を行う(3)法令、国際法の遵守(4)自衛軍の組織、運営は法律で定める
●「自衛軍の統制」を新設 首相の指揮監督に服するなど
●司法(第6章)に、軍事裁判所の設置を明記