2005年7月31日(日)「しんぶん赤旗」
「九条の会・有明」に9500人
三木・鶴見・小田・奥平・大江・井上氏が講演
“変化は来る”“勇気もらった”
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」―会場に響きわたる憲法第九条の唱和。東京・有明コロシアムで三十日、「九条の会・有明講演会」が開かれ、高知県から朝一番の飛行機できた男性や、神戸市から前日に上京し開会の三時間以上前にかけつけた女性など、全国から九千五百人が参加。大江健三郎さん(作家)が紹介した「求めるなら助け(変化)は来る/しかし、決して君の知らなかった仕方で」との詩の贈り物に、「勇気をもらった」との若い人の感想も。中国、韓国をはじめ米、英の放送局も取材、国際的注目を集めました。
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■「会」3千超す
日本共産党の志位和夫委員長はじめ共産、社民、民主の国会議員も多数参加。参加を呼びかけてきた著名人も来賓として紹介されました。また、地域や分野別の「会」が三千を超えたことが発表されました。
クラシックギターの第一人者・荘村清志さんのやさしく澄みわたった音色が響くギター演奏で始まった集いでは、「九条の会」呼びかけ人のうち六氏が講演。三木睦子さん(三木武夫記念館館長)が「九条が危ないと燃えたぎるような血を燃えたたせてやってきた。静かで平和で楽しい、芸術の光に満ちた日本でありますように」との思いを語り、『もうろくの春』という詩集を出した鶴見俊輔さん(哲学者)が「“もうろく”をたてに、戦争反対を続けていきたい」とのべるなど、個性豊かな話に会場は拍手や笑い、共感の声に包まれました。
■アジアの信頼
小田実さん(作家)は、中国革命の父・孫文が日本に対し軍事力による支配という“覇道”をめざすのか、道義による“王道”をめざすのかと問いかけた意味をもう一度考え直すべきだと提起。「この憲法があってこそアジアと世界に生きる日本に対する信頼がある」と強調しました。
奥平康弘さん(憲法研究者)は、自民党などの九条二項改変論に対し、「九条一項は二項があってはじめて宣言としての意味がある。二項を欠けば一項はもぬけの殻となる」と批判。「九条改正の動きを防ぐことができれば日本の歴史において画期的なことになる」とのべました。
大江さんは沖縄戦や広島・長崎の原爆被害などを「受忍せよ」と迫る国の姿勢を告発し、「『受忍しない』という覚悟を固める必要がある」と力説。現状を悲観する意見に対し、米国の詩人シュナイダー氏が「五年は嘆く通りかもしれないが十年たてばどうだろう」と語りかけたことを紹介しました。
井上ひさしさん(劇作家)は、昭和二十年(一九四五年)の平均寿命が男子で二十四歳に満たなかったことなど数々の事実を紹介しつつ、「あの戦争が正しい、あの時代がすばらしかったという人々が増えている」と告発しました。北海道・帯広での講演で欠席した澤地久枝さん(作家)はメッセージビデオで「息の長いことをやっていくのに、あきらめず、揺らがず、にこやかにやっていきたい」と呼びかけました。
群馬大一年生の有路登志紀さん(18)は「十年後に思いもかけなかったような形で変化が起こるかもしれないという大江さんの話に、不安に思うだけじゃだめだ、いまの運動が十年後に貢献できるよう頑張ろうと思いました」と語っていました。
▼九条の会が行動提起
「九条の会」事務局は講演会終了後、今後の行動について提起しました。行動提起は、次の四点です。
―アピールに賛同し広範な人びとが参加する「会」を全国の市区町村、学区、職場、学校につくり、広げよう
―相互に情報や経験を交流しあうネットワークを広げ、全国的な交流集会の開催をめざそう
―大小無数の学習会を開き憲法九条の意義を学び、改憲キャンペーンをはね返そう
―一人ひとりが、ポスター、ワッペン、署名、意見広告、政治家やマスコミへのハガキ運動など、九条改憲に反対する意思をさまざまな形で表明し、大きな世論をつくりだそう