2005年7月30日(土)「しんぶん赤旗」

主張

働く人の夏休み

年休の半分を捨てさせる異常


 「忙しくてクタクタ。ゆっくり休みを取りたい」。働く人たちの共通の思いです。夏の連続休暇の平均は週休日を含めて七・七日です。欧米では大統領や首相が一カ月ほどバカンスをとるように、長期休暇が常識です。日本の休暇は貧弱すぎます。

■取得率47%に低下

 日本の年次有給休暇の取得率は年々下がり続け、一九九三年56・1%から二〇〇三年47・4%に低下しました。取得日数は八・五日です。

 年休取得率がなぜ下がり続けるのか。そこには大企業がリストラ経営に走り、要員を極端に減らし、仕事量を増やしている実態があります。連合総研の調査では、年休取得が悪くなった理由で多いのは「担当する仕事量が増加した」「リストラに伴う要員、人材不足」の二つです。

 大企業が生産計画をたてる場合、休暇が満足に取れない97%などの高い出勤率を前提にしていることは重大です。ドイツは三十日の有給休暇を全部とり出勤率が81―83%といわれるのと比べても異常です。休暇を大量に捨てさせることが前提の生産計画や要員管理は改めるべきです。

 ドイツなどは、社員全員に長期の休暇を保障することが、企業の人事の仕事です。日本とは大違いです。

 年休は憲法が保障するかけがえのない権利です。労働基準法は、労働者の請求する時季に休暇を与えることを義務付けており、年休の申し出を拒むことはできません。

 パートや派遣社員も年休の権利があります。週五日以上、六カ月間働けば正社員と同じく年間十日、勤続一年ごとに増え最高二十日の休暇があります。週一―四日働くパートも、最大三―十五日の休暇があります。休暇がまだ少なく、その権利が徹底されていないことは問題です。

 先日もテレビドラマで、スーパーの店長が「パートに有給休暇はない」と休暇申請を拒否したところ、労働基準監督官が、年休の規定があると指導するシーンがありました。

 これは架空の話とはいえません。実際、パートに年休があることを知っている人は六割強にとどまり、「いっさいもらっていない人」が44%を占めるからです(連合総研調査)。

 パートの貴重な年休を捨てさせるのはもってのほかです。パートや派遣に年休の権利を徹底し、休暇の日数や取得の条件を改善すべきです。

 いまむちゃな働き方で休暇も取れず、過労死や過労自殺する痛ましい悲劇が後を絶ちません。企業が年休を与えるべき義務も、労働者の健康を確保する責務も果たさず、犠牲を生み出すのは許しがたい行為です。

 働く者にとって休暇は、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活と家族のふれあいのために欠かせません。

 その年休を労働者が残す大きな理由に「病気になった際に使いたい」という思いがあります。ドイツでは病気は年休に算入されないことを法律で明記しています。

 年休取得に関するアンケート調査を実施した労働政策研究・研修機構の報告書は、企業レベルで短期間の私傷病に対応した休暇制度の設置、全従業員が年休を完全取得することを前提とした要員管理などを提案しています。当然の方向です。

■150万人の雇用拡大

 年休の完全取得は雇用拡大にもつながります。百五十万人の雇用創出と十二兆円の経済波及効果があると試算されています(自由時間デザイン協会)。政府が、企業に年休の完全取得を前提とした生産計画を立てることを義務付けるなど、本腰を入れて取り組むことを求めます。


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