2005年7月23日(土)「しんぶん赤旗」
解説
改悪自衛隊法が成立
米先制攻撃戦略への加担狙う
二十二日に成立した改悪自衛隊法・防衛庁設置法は、米国の先制攻撃戦略を補完する「ミサイル防衛」システムの構築に向け、重大な一歩を踏み出すものです。
改悪法が現場の自衛隊指揮官に弾道ミサイルの迎撃権限を与えたのは、米国が自国の「ミサイル防衛」システムと日本のシステムとの一体化を強く求めているのに応えるためです。
米側は「(日米のシステムを)高度に自動化し、統合化することが必要」(シュナイダー米国防長官顧問)とし、弾道ミサイルの迎撃を現場の判断で「自動」的に行うよう主張。米軍と自衛隊との「共同指揮統制システム」(ライト在日米軍司令官)の構築も求めています。
「ミサイル防衛」は、相手国の弾道ミサイルを無力化し、報復の心配なく先制攻撃ができる態勢を確立するため、ブッシュ米政権が同盟国を巻き込んで進めている計画です。日米のシステムが自動化・統合化すれば、自衛隊は日本防衛とは関係のない事態での対処を迫られ、違憲の集団的自衛権の行使に踏み込むことにもなります。
改悪法に盛り込まれた陸海空三自衛隊の統合運用態勢への移行も、米国の先制攻撃戦略への加担をにらんだものです。
自衛隊が二〇〇二年十二月にまとめた「統合運用に関する検討」成果報告書は、米軍の対テロ報復戦争への支援など自衛隊の海外派兵拡大の動きに触れ、「これらの活動に際しては、(陸海空の)各自衛隊の能力を事態の特性に応じて柔軟に組み合わせた運用が必要」と指摘。同時に「統合運用を基本とする米軍との共同作戦を円滑に行う」ために「自衛隊の態勢を(米軍と)共同が容易な統合運用の態勢にする」ことを求めていました。
今回の態勢移行は、自衛官の「最上位」である統合幕僚長に部隊運用の権限を集中させて自衛隊をいっそう本格的な軍隊組織に変え、日米が共同で海外に軍事介入する態勢をつくろうとするものです。(榎本好孝)