2005年7月18日(月)「しんぶん赤旗」

主張

銀行の保険販売

お年寄りの「安心」奪う商法


 国民生活センターによると、銀行による個人年金保険の販売(二〇〇二年十月に解禁)で、契約をめぐるトラブルが急増しています。

 全国の生活センターに寄せられた相談は〇二年度(半期)が二十五件、〇三年度九十三件、〇四年度が百四十六件とうなぎ上りです。

■元本割れの危険隠し

 とりわけ苦情が多いのが「変額年金保険」です。大銀行が外資系保険会社と組んでお年寄りに売り込んでいますが、株や債券を中心に運用し、成績が悪ければ受け取る年金額が減ります。投機性が強く元本割れの危険があり、保険というより投資信託に近い商品です。

 具体的な事例を見ると―。定期預金をする予定で銀行に行くと、「定期より有利」と変額年金保険を銀行に勧められ、元本保証かと聞くと「年金原資保証です」と説明されたので契約。後日、保険会社から送られてきた資料で元本割れの危険があることを知り解約したところ、返戻金は元本を割っていた(六十代男性)。

 安全な運用を望む高齢者に対して、元本保証であるかのように説明し、強引に契約させるケースが目立ちます。「年金原資保証」をうたった年金保険でも、中途解約や満期時の一括受け取りの場合には受取額が支払った保険料を下回ることもあり、元本は保証されません。

 定期預金の満期直前に銀行員が来て変額年金保険を強く勧めるなど、銀行が業務で得た個人情報を流用していることも報告されています。

 クーリングオフ(契約解除)ができると思って契約したが、申し出ると「できない」と言われたという事例もあります。銀行の店舗窓口で契約したり、預貯金口座に保険料を払い込んだ場合、「保険業法」はクーリングオフの適用を除外しています。抜け穴のある法律とともに、それを悪用し、クーリングオフが適用されないことを告げずに契約させる銀行のやり方は許せません。

 受け取る年金額が決まっている「定額」年金保険でも、円高になれば目減りする外貨建ての商品で被害が出ており、注意が必要です。

 変額年金保険は、もともと外資系保険会社が開発した商品です。銀行窓口での個人年金保険の売り上げ上位に名を連ねているのも外資系、とりわけアメリカ系の保険会社です。

 一九九〇年代の日米保険協議、ブッシュ大統領と小泉首相が合意した「規制改革イニシアティブ」などで、米政府は外資系保険会社への規制撤廃を求め、保険商品の銀行窓口販売の自由化を要求してきました。

 金融庁は〇七年に銀行窓口での保険販売を完全自由化する構えです。

 安心して資金を預けたいという国民の期待に逆行し、大銀行と米保険会社の利益を優先する規制緩和はやめるべきです。

■大もうけ上げる銀行

 銀行が変額年金保険を売り込むのは、不良資産を抱えることなく大もうけできるからです。銀行が手にする手数料は、ほかの金融商品と比べて格段に高くなっています。

 ある大銀行の場合、個人年金保険の販売手数料は、五十億円以下だった〇二年度から〇四年度には二百五十億円程度へと急伸しています。

 告発されている銀行の商法は、お年寄りの預貯金を狙うリフォーム商法のような悪徳商法にも通じる冷たい商法です。郵政民営化は、こんな「民間」並みに郵貯を変質させる暴挙です。求められているのは、利用者に安心を提供する本来の姿勢を、銀行に取り戻させることです。


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