2005年7月16日(土)「しんぶん赤旗」

外相 「軍隊あるから平和」

沖縄 性被害者非難に怒り


 町村信孝外相が、米兵に性暴力を受けた沖縄の女性の基地撤去を訴える手紙に対し、「軍隊があるからこそ日本は平和」と批判(十三日)し、沖縄県民の怒りが広がっています。ところが外相は十五日、今度は、「ある種の意図にもとづいて、誘導的に報道されている」と、発言を報じた地元マスコミに批判の矛先を向け、開き直りました。

■何人の女性が犠牲になれば

 手紙は、二十一年前に米兵に性暴力を受けた女性が、稲嶺恵一沖縄県知事に送ったものです。地元紙の沖縄タイムス(九日付)が掲載しました。米空軍兵士による少女わいせつ事件(三日)に衝撃を受け、「いったい何人の女性が犠牲になれば、気がすむのでしょうか?」とつづっています。

 手紙によると、女性は、高校二年生のとき、学校帰りにナイフで脅され、被害を受けました。「もう終わりだ、自分は死ぬのだ」。そう恐怖を感じました。

 手紙は「20年以上の月日が流れたいまでも、私は事件による心の傷に苦しんでいます」「米兵達は今日も我が物顔で、私達の島を何の制限もされずに歩いています。仕事として『人殺しの術』を学び、訓練している米兵達が、です。稲嶺知事、一日も早く基地をなくして下さい」と訴えています。

■「報道が誘導」と外相八つ当たり

 十三日の衆院外務委員会で、社民党議員がこの手紙を読み上げ、感想を求めたのに対し、町村外相は「被害を受けた方の気持ちは、しっかり受けとめなければならない」としながら、「米軍あるいは日本の自衛隊があるからこそ日本の平和と安全が保たれている」と答弁しました。

 被害を受けた女性が勇気を出して訴えた痛切な願いを踏みにじるものでした。

 この答弁に対し、地元紙は「勇気ある被害者に鉄つい」(沖縄タイムス十四日付)と批判。手紙を出した女性も「心臓をえぐられているような気持ち」「二度殺された思いだ」(琉球新報十五日付)と語りました。

 十五日の外相発言は、この報道に八つ当たりしたものです。

 町村外相は、この日の衆院外務委員会で「米軍で平和が保たれている」という考え方について、「被害者の方に、そういう考えを持ちなさいと意図したわけではない」と釈明。一方で「被害者の方も、報道をみて、『町村はこういった』と受け止められたのでしょう」とのべ、地元紙の報道を「誘導的にといっては何だが、私の答弁をバランスよく報道しているとは思えない」と非難しました。

 女性の訴えは、沖縄の現実が「米軍によって平和が保たれている」のではなく、逆に米軍によって平和も命も尊厳も脅かされていることを告発したものです。

 その被害者に向かって、「平和が保たれている」と、加害者である米軍駐留の必要性を説く外相。それを批判されると、賛意を示さないマスコミまで非難する――。日本政府が、戦後六十年にわたる沖縄の痛みに、いかに心を寄せることができないのか。骨の髄まで、安保条約=在日米軍基地絶対視の思想にむしばまれていることを示しています。

 (田中一郎)


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