2005年7月15日(金)「しんぶん赤旗」
障害者「自立支援」法案に対する
山口議員の反対討論(大要)
衆院厚生労働委
十三日の衆院厚生労働委員会で、日本共産党の山口富男議員がおこなった障害者「自立支援」法案への反対討論(大要)は次の通りです。
はじめに、今の法案にかかわる政府提出資料の誤り、また、政府答弁の姿勢に私は厳しい抗議を表明します。
本法案には、いわゆる三障害のサービスを一元化し、義務的経費部分を設けるなどの、当然の方向もあります。しかし、これらを打ち消してあまりある、障害者の生活と権利を脅かす重大な内容が盛りこまれています。
■自立支援に逆行
反対する第一の理由は、障害福祉サービスに利用者一割負担という、応益負担、定率負担を導入することです。これによってホームヘルプで四倍、通所施設で十九倍、全体では年間七百億円を上回る負担増となります。
所得保障が全く不十分なもとでは、この負担増に耐えられない多くの障害者を生み出します。「負担の上限」や減免措置を設けても決して解消されない問題です。
障害者への福祉サービスの利用を「益」とみなし、負担増を求めること自体、障害者の人権保障に真っ向から反しています。応益負担の導入は、サービスを多く必要とする重度障害者ほど、重い負担増を強いるもので、まさに障害者の社会参加と自立の支援に「逆行」するものです。
通所サービスの食費や入所施設の食費・居住費・光熱費への負担増、また作業所など「働く場」での利用料の負担増も、障害者に痛みを押しつけるものにほかなりません。
■医療を遠ざける
第二に公費負担医療制度にも大きな負担増を求めていることです。現行では、更生医療・育成医療は応能負担、精神通院公費医療は医療費の5%負担です。法案ではこれを原則一割負担とし、一定以上の所得者は医療保険と同様に三割負担とします。さらに更生医療・育成医療の入院給食費に自己負担を導入します。こうした負担増は、障害者を医療機関から遠ざけ、必要な医療を受けられず、健康状態の悪化すら招きます。自立支援医療などとは決して呼ぶことのできないものです。
■負担増と給付減
第三に、障害程度区分をはじめとして、法案の審議にかかわる重要事項がいずれも政省令事項に委ねられていることです。その数は、告示事項を加えると二百十三項目に達します。法案の重要な内容にかかわる事項が明らかにされないで、どうして十分な審議ができるのか。政省令の基準いかんでは、障害者へのいっそうの負担増と給付減をもたらすのであって、立法府としてこのまま認めるわけにはゆきません。
与党提案の修正案は、これらの重大な問題点を引き継いだ上に、この間の参考人質疑をはじめ、障害者団体や関係者から寄せられた多くの要望、提案を無視するもので、「修正」の名に値しないものです。本法案を撤回し、障害者福祉施策の抜本的な再検討をはかることこそ、私たちに求められた切実な課題ではありませんか。
■各団体が抗議声明
自民、公明両党が十三日の衆院厚生労働委員会で、障害者「自立支援」法案の採決を強行したことに、各団体が抗議の声明を発表しています。
日本障害者協議会(勝又和夫代表)は応益負担は障害者政策の今後に根本的な転換を迫り、「利用者の直接的な負担増にとどまらず、各種事業の公費水準にも重大な影響が及ぶ」と懸念を表明しています。
きょうされん(立岡晄理事長)は応益負担導入は、国際的に類をみず、障害を個人の責任に負わせようとする考え方に道を開き、「金銭的ならびに心理的な負担が、入所施設や病院からの退所・退院を鈍らせ、入所施設や病院へ舞い戻るケースを増やしてしまう」としています。
全日本民主医療機関連合会も、肥田会長名の声明を発表。育成医療や更生医療、精神障害者通院医療費公費負担などの公費負担医療制度の改悪が、受診抑制による健康破壊やいのちの危険を招くと指摘しています。