2005年7月14日(木)「しんぶん赤旗」

米軍「国土防衛」も重視

国防総省が新方針


写真
(写真)米国防総省の新方針「国土防衛・民間支援戦略」の表紙

 米国防総省は六月下旬、これまで国外での軍事行動を主要任務としてきた米軍を国土防衛にも活用するとの新方針「国土防衛・民間支援戦略」を発表しました。今後十年間に米国土がテロ攻撃を受ける可能性は極めて高いとの情勢認識に基づくもの。イラクなどで進めてきた「対テロ世界戦争」が米国土の安全強化に結びついていないことを米軍が認めたものだとも言えます。

 米軍では現在、来年初めまでに大統領と議会に提出する「四年ごとの国防態勢見直し」(QDR)報告の作成が進んでいます。この過程で、ほぼ同時に起きる二つの主要地域紛争に対応できる米軍を構築するとの現行の「二正面作戦」を見直し、もっと国土防衛に力を振り向けるべきだとの議論が出ていると報じられています。今回の新戦略は、これと軌を一にした動きです。

 新戦略は、つぎのように述べています。

■差し迫った課題

 「米国領土に対する化学・生物・放射性・核・高出力爆発兵器(CBRNE)による同時・多発的攻撃は現実的だ」「今後十年間にわたり、米国攻撃を狙うテロ集団は、国家安全保障にとって最も差し迫った挑戦課題だ」

 イングランド国防副長官は、新戦略文書の序文で、新戦略が必要になった理由について、「米軍は伝統的に、兵力を海外に投入することによって米国を守ってきた。海外での任務は、国の安全にとって死活的役割を果たし続ける。しかし二〇〇一年の9・11テロ攻撃が強調したのは、米国が今、冷戦時代とは根本的に異なった挑戦課題に直面しているということだ」と語っています。

 具体的にはどうするのか。9・11テロ後、米軍はすでに、国土防衛に軍を活用する態勢の構築に着手しています。

 一つは、二〇〇二年の北方軍(司令部・コロラド州)の創設です。同軍は米国土防衛を管轄し、陸地を接するカナダやメキシコ、その周辺海域を担当しています。国土防衛担当の国防次官補のポストも新設されました。

 今回の方針では、これらの強化に加え、太平洋軍司令部や北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)を国土防衛に組み込むとしています。また、現在、国土防衛の任にあたっている沿岸警備隊や州兵、警察との連携が図られます。防空やミサイル防衛への州兵の活用などが提起されています。

■風船まで「脅威」

 新方針のもとでは、▽情報を共有する▽「国内でのCBRNE攻撃の結果に対処できるよう戦争戦闘部隊を装備、訓練する」▽「警察が市民的騒動に対処するさい、米軍がそれを支援する」▽軍需産業や兵器開発機関などの「国防産業基盤」を防衛する―などが想定されています。

 新方針は、米国土へのテロ攻撃で、民間航空機や超軽量機のほか、無人機、無線操縦機、さらには風船までもが「脅威」になりうると警戒しています。さらに、巡航ミサイルによる攻撃に「大きな注意を払う」と強調しています。

 新方針はまた、「基幹同盟国との防衛関係で、国土防衛は、注意深く検討された中心的要素になるべきだ」とも述べています。特に「太平洋・カリブ海地域の友好諸国と北大西洋条約機構(NATO)同盟諸国」との連携を重視しています。

 無論、新戦略は、米軍が海外での侵略的軍事活動をやめることを意味しません。今回の戦略文書も、海外での軍事行動の重要性は変わらないとし、「今後十年間を通じ、海外で米国が軍事作戦をする可能性は高い」と述べています。

 主要同盟国の巻き込みを含め、新戦略が今後、具体的にどう展開していくか。注視が必要です。(坂口明)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp