2005年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

明治安田生命の違法営業

保険金支払い少なく

会社の方針だった

増収へ「死差益」に熱中


 支払うべき死亡保険金を払わなかったとして、二月に金融庁から保険業法違反の行政処分を受けた明治安田生命保険(金子亮太郎社長)でその後も保険金不払いが相次いで発覚、金子社長が辞意表明(五日)する事態になっています。問題の根は明治、安田両生命保険の合併前にさかのぼります。(中村美弥子)

 二月の行政処分は、保険金を支払わなかった事例が、一九九九年四月から二〇〇四年九月までに百六十二件(約十五億円)にのぼったため。その後、金融庁が四月中旬に開始した検査の過程で、死亡保険金の不払いがふくらみました。あらたに九十件(約七億円)、入院給付金不払いが六十四件(約一億四千万円)もわかったのです。

■厳しい基準適用

 生命保険の契約者は、加入する際に病歴や健康状態を生保会社に告知する義務があります。しかし、告知しなくても加入から二年を超えると契約を解除できないという約款になっているため、明治安田生命では、多くの営業職員が契約者の入院歴を知りながら商品を販売していました。

 他方、死亡保険金の支払いの際には、募集時の説明状況、告知義務違反の内容などを考慮せず、契約者に一方的に厳しい基準を適用したため支払い拒否が多発しました。

 こうした違法営業の芽は、旧明治生命時代にさかのぼると、ある社員は指摘します。生保業界四位の明治生命と同六位の安田生命が合併し、明治安田生命が誕生したのは〇四年一月。「明治による実質吸収合併」ともいわれる合併で、支払い基準は明治側の厳しいものが適用されました。

 当時、明治生命社長だった金子氏は〇二年三月、社長名で「支払い査定力を強化し、死差益の拡大を目指す」ことを経営計画に掲げました。死差益とは、死亡保険の保険金支払い見込み額と実際の支払い額との差額のこと。実際の支払い額が見込みより少なければ、死差益が生まれます。

■安定した収益源

 このため、保険金を支払うべきかどうかの基準を厳しくし、支払いを少なくするという方針をとったのです。死差益の確保・拡大は安定した収益源でした。

 旧明治からのベテラン社員は、〇二年の経営計画策定後の社内の変化を振り返ります。

 「死亡保険金も入院給付金もたくさん調査にかけたために支払いが滞るようになりました。死差益を確保しふくらませるために保険対象者のあら探しをやり、その結果、不正な不払い件数が続出しました」

 同社員は、保険金や入院給付金の支払い拒否に遭った人から苦情が相次いでいることを支払い部門にいる社員は知っていたはずだと指摘します。しかし、会社にとってマイナスの情報が上層部に届かない風土がつくられていました。

 「信頼が大きく傷つき、とても残念。経営者の責任は本当に大きい」と話す同社員。「今後は、まじめにセールスをし、契約通り支払うことを徹底して、少しずつ信頼回復していくこと以外に問題の解決方法はありません」と語っています。


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