2005年7月10日(日)「しんぶん赤旗」
ロンドン市民
“テロに屈しない”
「普段の生活続ける」口ぐち
バス・地下鉄利用に不安
【ロンドン=西尾正哉】五十人以上の犠牲者を出した同時多発爆弾テロから一夜明けた八日。ロンドンの街は地下鉄の駅が閉鎖されるなど傷跡が残る一方、テロに屈しないとする市民が努めて普段の生活を送ろうとしていました。
キングズクロス駅は、ロンドンからイギリス北部への長距離路線の玄関口としてにぎわう鉄道駅。八日午後も大きな荷物を持った人が駅構内を足早に歩いていました。
キングズクロスには地下鉄の駅もあり、地下鉄駅を出た車両が午前八時五十六分に爆破されました。その約五十分後、キングズクロス駅から数百メートル離れたタビストックスクエアでバスが爆破され十三人が亡くなりました。地下鉄が爆破され不通になったため、バスに乗ってきた乗客が犠牲になりました。
八日昼、タビストックスクエアを通りかかったロージー・ブリアクリフさん(20)は、キングズクロス駅の近くに住むロンドン大学の学生。大学のキャンパスも広場のすぐ近くです。
「正直言って、きのうはとてもショックを受けました。信じられない思いでした。でも今日になって非常に腹が立っています。何も悪いことをしていないまったく罪のない人を殺すなんて許せません」
■手荷物に注意
ブリアクリフさんは「今は誰でもバスや地下鉄に乗るのが不安だと思います。でも、私は生活を変えるつもりはありません。そうすればテロリズムが勝利することになりますから」ときっぱり語りました。
普段の生活を変えないのはクリス・リーさんも同じです。タビストックスクエア近くのオフィスでコンピューターエンジニアとして働くリーさんは「私は、生活を変えていません。でも普段よりは私の周りにいる人に注意の目を向けるようになりました。大きな荷物を持ってバスに乗った人が降りる際にちゃんと荷物を持っているかどうか見ていますよ」。
「問題を解決するのに暴力を使うのはまったくの誤りだと思います。どうしてこんなことをしたのかは分かりませんが、こういうやり方は許せません」と言うリーさん。「簡単ではないでしょうが、問題を解決するためには、暴力を使わない、よりよい方法があります」と語り、米英が強行したイラク戦争も誤りだったと指摘しました。
■無差別に犠牲
テロに破壊されたバスの運転手ジョージ・サラダキスさん(49)は、バス会社のウェブサイトにコメントを発表し「私も他の運転手も、最善を尽くして仕事を続けます。私たちは普段の生活を続けます。私たちは(テロリストに)脅かされはしません」と、今後もバスの運転手を続ける決意を示しました。
テロはロンドンに住む日本人にも影響を与えました。
ロンドン市内南西部のウィンブルドンに住む日本人女性(29)の夫は事件直後、会社の事務所から出るのを数時間禁じられました。帰宅に普段使う地下鉄は動かず、夫は鉄道の主要駅まで歩いてたどり着いたといいます。
「ロンドン地下鉄の入り口でたくさんの人が苦しんでいるテレビを見て、東京の地下鉄サリン事件を思い出しました。テロが罪のない人々を無差別に犠牲にしたのが腹立たしい」と語りました。