2005年7月9日(土)「しんぶん赤旗」
「公明前区議 わいろせっつく」
東京・足立
保養所汚職 初公判で検察
「党まとめるから便宜を」
東京・足立区の保養所の業務委託会社選定をめぐるあっせん収賄罪などで起訴された前公明党区議・忍足(おしたり)和雄被告(62)らの初公判が八日、東京地裁(栗原正史裁判長)で開かれました。検察側は冒頭陳述で、もうひとりの元公明区議が忍足被告に贈賄業者への便宜をはかるよう依頼したり、同被告が区施設統廃合計画への賛成と引き換えに区側に贈賄業者への便宜をはかるよう求めた――など、「清潔、福祉」の看板とかけ離れた同党議員の実態を浮き彫りにしました。
■別の同党元区議も関与
起訴状によると、忍足被告は、足立区の保養所「湯河原あだち荘」の業務委託先選定をめぐって、区内のかっぽう料理店「勇駒」が受注できるよう、区幹部らに働きかけ、発注情報をもらした見返りに現金三百万円をうけとりました。
冒頭陳述によると、「勇駒」役員の川島章男被告(69)が公明党議員に口ききを依頼するきっかけとなったのは、西口喜代志公明党区議(当時、のちに引退)の言葉でした。
勇駒に来店した西口区議に「保養所の情報を教えてほしい」と依頼。西口区議は「勇駒ならできるんじゃないか。やってみたらどうか」と後押ししました。同区議は二〇〇三年の区議選に立候補しなかったものの同期の忍足被告に「勇駒」が受託業者として選定されるよう便宜をはかることを依頼、忍足被告もこれを承諾しました。同年三月二十二日には、「勇駒」で忍足被告、西口区議、川島被告が会食。川島被告が「お願いします」と懇請すると、忍足被告は「わかりました」と了解しました。
■“取引”をもちかけ
区議選後、副議長に就任した忍足被告にたいし、川島被告は副議長室を訪れ「その節はよろしくお願いします。もし勇駒がとれたら、それ相応のお礼をさせていただきます」と請託。これを受けた忍足被告は、あだち荘の業者選定を担当している区地域振興部長に“取引”をもちかけます。
同部は住民サービス低下につながる北千住区民事務所、北千住サービスセンターの統廃合を計画しましたが、当時、公明党は反対していました。忍足被告は同部長にたいし、「もう反対しない。振興部の案が通るようにおれが党内をまとめてやる。その代わりに、あだち荘の運営委託は、勇駒にとらせてやってくれ」とセンターなどの統廃合と勇駒への委託を取引材料にしました。
振興部長は、忍足被告の意をうけ、勇駒を受託業者とするためには、指名競争入札でなく、行政裁量の大きい公募制を採用することを決定、選定手続きに必要な書類を正式な配布日前に勇駒に手渡しました。
■飲食や旅行に使う
勇駒が受注に成功したあとの二〇〇三年の十一月下旬か十二月中旬ころ、忍足被告は、報酬として三百万円のわいろを打診。翌年の五月以降も、「少なくとも二回にわたり支払いを求め」、計三百万円を受け取りました。忍足被告はこのわいろを韓国クラブや旅行に使っていました。
公判で忍足被告は「間違いありません」と起訴事実を全面的に認め、贈賄の罪に問われた「勇駒」役員の川島被告も認めました。
検察側は本人尋問で「『わが党は清潔さには非常に厳しい』というが、あなたはわいろをせっついて要求している」「センターなどの統廃合と勇駒の受注を交換条件にするとは権限乱用のさいたるものだ」と批判しました。