2005年7月6日(水)「しんぶん赤旗」

ホワイトカラー“残業野放し”制度

見過ごせない財界援護論


 財界の強い要求で、ホワイトカラー労働者を労働時間規制の適用除外とする法律づくりの準備が、厚生労働省の研究会ですすめられています。このなかで財界を援護して、制度導入を正当化しようとする学者の議論が目立っています。「日経」(六月三日付)に掲載された小嶌(こじま)典明・大阪大学教授の一文もその一つです。

 近年、労働者や労働組合の告発もあって、企業犯罪である不払い労働(サービス残業)に対する指導と是正が強められています。不適正な労働時間管理が、不払い労働の温床になっており、厚労省は、経営者の労働時間管理の「責務」を明確にした通達(二〇〇一年四月六日)を出しました。

 多くの会員企業が不払い労働の是正と適正な労働時間管理を迫られた日本経団連は、〇五年版「経営労働政策委員会報告」で、「この通達のもとに、企業の実態を無視したかのような指導がなされている」と攻撃します。小嶌氏は、経団連の言い分に「あながち理由のないことではない」と、同意を表明します。

■労基法を攻撃

 小嶌氏は、経営者にとって、とりわけホワイトカラー労働者の労働時間管理が「難しい」とのべ、労働時間管理の必要がないホワイトカラー・エグゼンプション制度導入が必要だという結論に結び付けます。企業が法律を守るのは大変だ、だから、法律の方を変えろという主張です。

 労働基準法は、「労働者が人たるに値する生活を営むため」(第一条)に、一日八時間、週四十時間を超えて労働させてはならない(第三二条)と定めて、労働時間を規制しています。

 労働者が毎日、何時から何時まで働いたかを確認し、記録する労働時間管理は、法に基づいて企業が実施しなければならない原則で、労働者が人間らしく働き、生活するための最低限の保障です。

 “労働時間管理は難しいからやめよう”という小嶌氏の論は、労基法の精神を否定し、労働時間管理の責任を負わずに労働者を働かせたい企業のエゴを理屈づけたものです。長時間労働を当然視し、労基法を「工場法時代の遺制」(前出「経労委報告」)と攻撃する経団連の立場とまったく同じです。

■世界の流れは

 経団連が、ホワイトカラー・エグゼンプション制度を熱心に主張するのは、「ホワイトカラーが高い生産性を実現するため」(同前)です。「生産性」がすべてに優先し、企業の利潤のために長時間労働がなんの規制も受けずに強制されます。

 労働者は機械ではありません。ILO(国際労働機関)の第一号条約が八時間労働制だったように、労働時間は第一義的に人権問題でした。欧州の労働運動は、「自分と家族のために」のスローガンのもとに、労働時間規制を前進させてきました。「人間らしい労働」の実現こそが、世界の流れです。

 過労死という世界でも異常な状況をどう改善するかが、日本の特別に重要な問題になっているとき、逆に加速させるような小嶌氏の労働時間論は、国際的にも通用しない“資本の論理”そのものです。(当摩民生)


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