2005年7月6日(水)「しんぶん赤旗」
郵政法案めぐる攻防
薄氷の可決 小泉政権に打撃
「可とするもの二百三十三、否とするもの二百二十八」――投票結果が読み上げられると、議場にはどよめきが走りました。
郵政民営化法案は五日の衆院本会議で、日本共産党、民主党、社民党の反対に加え、自民党からも大量の反対議員が出るなか、きん差で可決されました。国民のなかに広がる不安と反対の世論の反映であり、小泉純一郎首相はこの結果を重く受け止めるべきです。
■わずか2割
わずか五票差という投票結果。その背景には、圧倒的な国民が、郵政民営化法案の今国会成立に反対しているという事実があります。
共同通信が六月中旬に実施した世論調査では「民営化を進める必要はない」「この国会にこだわらず議論を尽くすべきだ」が72・1%にたいして、「この国会で成立させるべきだ」はわずか21・7%。「読売」世論調査(六月十一、十二日実施)でも、「慎重に審議すべき」61%にたいし、「今国会で成立させる」は16%にすぎません。
地方議会の動きをみても、四十七都道府県議会のすべて、市町村議会の九割で、民営化に反対ないしは批判的な意見書があがったことも見逃せません。
何がなんでも民営化という小泉内閣の姿勢は、こうした国民の世論とはかけはなれたものです。
■口実破たん
本会議で自民党から賛成討論にたった山崎拓議員は、郵政民営化特別委で「百十時間になんなんとする審議を尽くした」と胸をはりました。しかし、「なぜ民営化なのか」「民営化したら身近な郵便局はどうなってしまうのか」という国民の疑問に、政府は最後まで答えませんでした。
当初は、「郵政を民営化しないと肥大化する」といっていた政府の説明が、審議のなかで「民営化しないとジリ貧になる」と百八十度かわるでたらめぶり。日本共産党の追及で、政府自身の試算(骨格経営試算)でも、郵便貯金は完全民営化される二〇一六年度に、公社のままなら黒字千三百八十三億円、民営化なら赤字六百億円という事実が示され、民営化こそが郵政事業をジリ貧に追い込むものであることが明らかになりました。
民営化で赤字になる結果、全国の郵便局のネットワークがずたずたにされる危険があることも鮮明に。結局、民営化は、郵便貯金、簡易保険の縮小・廃止を要求してきた金融業界やアメリカの要求にこたえるために、国民に犠牲を押し付けるものでしかないことがはっきりしました。郵政民営化法案は、審議すればするほどぼろぼろでした。
■無理を重ね
郵政民営化に反対する世論の強まりで、自民党内にも、これに反対する議員グループが百人規模で形成されたことは、自民党執行部を悩ませました。
その切り崩しのために、小泉首相自身が「解散」のおどしをかけ、執行部も処分をちらつかせながらの押さえ込みをはかりました。公明党の神崎武法代表も六月八日の会見で、反対した議員への選挙支援はしないとのべたことも、大きな影響を与えました。
そこまで無理に無理を重ねながら、自民党からの「大量造反」で、薄氷の採択――小泉政権が受けた政治的な傷はけっして小さくありません。
小泉首相は、郵政民営化ごり押しをあきらめるべきです。(竹腰将弘)
■郵政民営化関連法案
民営化の基本理念などを盛り込んだ郵政民営化法案や、持ち株会社について規定した日本郵政株式会社法案など六法案で構成。二○○七年四月に日本郵政公社を解散し、持ち株会社の下に窓口会社、郵便事業会社、郵貯銀行、保険会社に四分社化。持ち株会社が保有する郵貯、保険両社株は、民営化後十年以内に完全処分することを義務付けました。
これに対し、自民党は党内の反対派を説得するため、四月の政府・与党合意に基づき修正案を作成しましたが、国民サービスを切り捨てる民営化の本質を変えるものではありません。