2005年7月6日(水)「しんぶん赤旗」
主張
郵政法案採決
理由なき公共サービス壊し
郵政民営化法案が自民、公明の賛成多数で衆院を通過しました。日本共産党、民主党、社民党のほか、自民党の一部議員も反対し、わずか五票差での可決です。
反対討論に立った日本共産党の塩川鉄也議員は、「日米金融資本のために、国民生活のすみずみに浸透し、土台から支えてきた郵政事業を根本から破壊する今回の郵政民営化法案は断じて認められません」と厳しく批判しました。
■決まり文句の繰り返し
賛成討論で自民党の山崎拓議員は「民間にできることは民間に」と、決まり文句を繰り返しました。
「民間にできること」といいますが、銀行は不採算地域の店舗を閉鎖し、統合・合併にともなって都市部の店舗も大きく減らしてきました。農林中金総合研究所のリポートによると、この八年間の店舗数削減は都銀31・1%、信組32・1%、農協21・6%という大幅なものです。
これに対して、郵便局は百七十六局増やしています。
銀行はATM(現金自動預払機)の時間外引き出しなど、手続きのいちいちから手数料を取ります。利用者から取る手数料は、投資信託や年金保険の販売手数料とともに、銀行の収益の柱になっています。郵便局はATM手数料を取っていません。
民間銀行では、ATMのうち視覚障害者に対応した機種は13%にすぎないのに、郵便局では全機種、100%の万全対応です。
民間にはできないことをやっているのが郵便局です。
山崎氏は「職員が民間人になるとともに、免除されていた税金が支払われることにより財政再建にも貢献する」ともいっています。
郵政公社に税金は一切投入されていません。職員は国家公務員ですが、給料にも税金を使わずに独立採算で経営しています。
公社の税金が免除されていたといいますが、公社は利益の50%を国庫に納付することになっています。政府の試算でも、厳しい金利環境のもとで、民営郵貯は六百億円の赤字になって法人税を払うどころではなくなる見込みです。公社を維持した場合は千四百億円の黒字となり、七百億円を国に納めることができます。
山崎氏は「三百四十兆円の資金を官から民に流す道を開く」と民営化の「メリット」を強調しました。
小泉内閣が「官から民」というとき、「民」は国民の「民」ではなく民間企業の「民」を指しています。郵貯・簡保の三百四十兆円の資金を「民に流す」よう要求してきたのは、日米の民間金融機関とアメリカ政府です。
■民間任せにはできない
麻生総務相は民営郵貯の株式時価総額は十兆から十五兆円であり、その程度のお金で(減ったとしても)二百兆円の郵便局の資金を動かせるとなると、外資に狙われて「危なっかしいなと思うほうが普通だ」と記者会見で語っています。
郵政民営化を強行し、郵貯と簡保の株式を完全売却するのは、ハゲタカが待ち受ける荒野に大好きなエサをばらまくようなものです。
山崎氏があげたことは、審議の中で日本共産党が徹底して批判し、政府も認めざるを得なかった議論や反論不能に陥った議論ばかりです。小泉内閣は、なぜ郵政を民営化する必要があるのかを、最後まで明らかにすることはできませんでした。
郵政事業は民間任せにできない大切な公共サービスです。参院で否決に追い込むために、民営化に反対する世論をいっそう強めましょう。