2005年7月4日(月)「しんぶん赤旗」
「共謀罪」合意だけで処罰?!
衆院委で審議入り
普通の市民団体も監視対象に
明白な行為がなくとも、犯罪意思の合意があれば犯罪が成立する「共謀罪」の新設を盛り込んだ刑法等の一部改正案が、六月二十四日の衆院法務委員会で審議入りしました。
■原則転換
この法案の「共謀罪」は、傷害・組織的強要などを二人以上の者が団体の活動として行うことを計画した場合に、犯罪を実行するための準備行為になんら着手していなくとも処罰できるものです。しかも、四年以上の懲役・禁固にあたる罪を対象としているため、罪数が五百五十を超え、非常に広範です。
現行刑法では、実際に犯罪が行われた場合に処罰することが原則であり、犯罪を実行するための準備行為すらない段階で処罰することを認めていません。対象犯罪について話し合い、合意することをもって犯罪が成立することになれば、内心の状態だけで処罰することになり、刑法原則の大転換になります。
何より問題となるのは、意思の合意をもって犯罪化するため、憲法が保障する「思想及び良心の自由」「信教の自由」「集会・結社・表現の自由」などの国民の基本的人権を侵害する恐れがあることです。
また、捜査において、意思の合意を外形的事実から認定することは困難であるため「共謀罪」の証拠は自白に頼らざるを得なくなります。こうなれば、自白偏重の捜査を助長することになり、冤罪(えんざい)事件を生む危険が増すことになります。
■国が介入
今回の法案について政府は、国連の国際組織犯罪防止条約の批准に伴う国内法整備だとしています。しかし、この「共謀罪」は、適用対象となる「団体」を暴力団などの犯罪集団に限定していないため、市民社会のあらゆる「団体」を適用対象として監視することになる恐れがあります。
普通の会社や労働組合などもこの「団体」に含まれてしまい、国による介入・弾圧に利用される危険があります。
国際的・組織的犯罪行為を取り締まることは当然ですが、現在問題となっている主な国際的・組織的犯罪であるクレジットカード偽造、ピッキング、薬物犯罪、人身売買などは、具体的準備行為の段階から処罰規定を整えている分野が多く、国民の自由を危険にさらしてまで「共謀罪」を新設する必要性はありません。
(国会議員団事務局・木岡崇)