2005年7月4日(月)「しんぶん赤旗」
主張
軍事費の急増
貧困救済や教育に回したい
二〇〇四年の世界の軍事費は、一兆四百億ドル(約百六兆円)になりました。二〇〇〇年には約八千億ドルだったのが三割も増えています。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が二〇〇五年版年鑑であきらかにしました。
世界の軍事費の急増は、アフガニスタン、イラクでの戦争で、米国が軍事費を激増させたためです。米国だけで世界の軍事費の約44%を占め、日本と英国を合わせると52%を超えます。
■ブッシュ政権が震源
世界の軍事費は、旧ソ連が崩壊した九〇年代、全体として減少の傾向にありました。しかし、ブッシュ政権は、〇一年の「9・11」以来、「対テロ戦争」と称してアフガニスタンへの報復戦争、イラクへの国連憲章違反の先制攻撃戦争にふみだしました。大量破壊兵器があるとうそをついてはじめたイラク戦争では、陸・海・空・海兵隊を大動員し、いまもなお、十四万人の兵員を駐留させているため、費用は莫大(ばくだい)です。最初から攻撃に加わっている英国も軍事費が急増しています。
日本の軍事費は、SIPRI年鑑によれば、〇四年度は四百二十四億ドル(四兆九千三十億円)で、米国、英国、フランスに次ぐ四位です。イラク戦争や海外派兵態勢づくり、ミサイル防衛システムの導入など、米国いいなりに日米軍事同盟を強化してきた結果です。
日本は、主要国の軍事費が減少傾向にあった九〇年代も、軍事費を増やし続けてきました。〇二年度は、過去最高の四兆九千五百三十五億円です。〇五年度は、四兆八千五百六十四億円。小泉首相は、「防衛費は三年連続マイナス」(三月二十三日)とのべていますが、最高額をわずかに減らしただけで、巨額であることに変わりはありません。
世界では、十億人以上、人類の六人に一人が一日一ドル(約百五円)未満の苦しい生活を余儀なくされ、飢餓や疾病で命を落とす人が少なくありません。アナン国連事務総長は、「貧困が命を奪っている」と警告しています。軍事費を削って、貧困救済、福祉・教育改善にまわすことは、地球的規模の優先課題です。
二〇〇〇年の国連ミレニアム・サミットは、一五年までに貧困と飢餓を半減させることを決めました。問題は、資金です。欧州諸国がODA(政府開発援助)を国家予算の0・7%以上にするとの目標を上回っているのとは対照的に、米国は0・13%、日本も0・20%にとどまっています。
昨年、「国連ミレニアム・プロジェクト」報告書は、貧困対策のためにあと四百八十億ドルが必要だと訴えるとともに、この追加分は「全世界の軍事費の約5%にすぎない」と強調しました。
米国、日本をはじめ軍事費大国は、こういう要請に正面からこたえるべきです。
■税金を生かす道は
政府は、国民に重い税負担を強いながら、さらに大増税を計画しています。その一方で、四兆八千五百億円もの軍事費を支出するのは筋が通りません。米国のイラク戦争に参加し軍事支援をすることは、戦争の放棄と戦力不保持を明記した憲法に違反しています。海外派兵、日米軍事同盟の世界的拡大のための軍事費など許されないことです。
軍事費を大幅に削減して、福祉・教育・暮らしの改善に回せば、国民生活の向上に役立ち、その一部を、世界の貧困対策などに活用すれば、多くの人を助けることができます。