2005年7月1日(金)「しんぶん赤旗」
中小企業にそっぽ
新銀行東京の貸し渋り
税金1千億円つぎ込み設立
天まで持ち上げた自・公・民
「中小企業振興のため」と石原慎太郎都知事の肝いりで一千億円もの税金を投入して設立した新銀行東京。ところが四月に開業後、中小業者から大ブーイングが起こっています。七月三日投票の都議選では、この問題でも、知事と一緒に新銀行設立を進めた自民、民主、公明の各党の責任が厳しく問われています。(中村圭吾)
「中小企業に対する無担保融資を中核とし、多彩なサービスを提供する…」(新銀行東京、ウェブサイト)と、中小業者に、期待感を振りまいた新銀行東京。一千億円もの都民の税金をつぎ込みながら、中小業者の“命綱”となっている無担保・無保証の都の制度融資は取り扱わないという――なんともおかしな銀行になっています。
白色申告している、ある業者が融資を申し込むと、「個人事業主の青色(申告)は受け付けるが、白色は受け付けない」と門前払い。一千万円の融資を申し込んだ経営者は、査定で五百万円に値切られ、二年返済の短期融資で、制度融資の倍の9%の金利を要求されたといいます。
こうした事例があいつぐなか、中小業者の団体の東京商工団体連合会は六月十七日に銀行側と交渉。銀行側担当者は交渉の席で「イヤだったら既存の金融機関に行けばいい」「フランス料理店でラーメンを注文されてもメニューがない。ラーメンのあるお店に行っていただくしかない」と強弁し、あげくに「都議会で決めたことですから」と居直ったといいます。
石原知事は「(新銀行は)サンタクロースや救世軍じゃない」(二〇〇三年七月一日、都議会本会議)と述べたことがありますが、まさに石原知事の言葉どおりの冷たい銀行になっているのです。
■中小企業の予算10年連続で削減
新銀行東京の華々しい宣伝の陰で、削減され続けてきたのが都の中小企業予算です。石原知事が就任した一九九九年からの七年間の削減額は、実に千二百億円。この十年間連続で、中小企業予算は減りつづけてきたのです。その結果、一般会計予算に占める割合(3・7%)は全国平均(6・8%)の半分程度になりました。
中小業者にとっての“命綱”の制度融資は、預託原資が大幅に削減され、政策的に低く抑えられてきた金利も、金融機関の定める高い金利へと引き上げられました。
その結果は、貸し渋りの増大。二〇〇三年度には、融資実績が初めて目標額を下回る事態となり、融資額も最高時の半分に落ちこみました。
「新銀行のために預託原資を引き揚げるようなことが行われれば、本末転倒」(都議会本会議で秋田かくお都議、〇三年七月一日)。
日本共産党が都議会で一貫して指摘してきた懸念が現実のものとなっています。
■“実績”と自慢の自・公・民「与党」
こんな都政にもろ手をあげて賛成し、新銀行を天まで持ち上げ礼賛してきたのが、自民、公明、民主の各党です。
自民党は「新銀行東京の開業により、東京発の金融革命は、また新たな一歩を踏み出す」(予算特別委員会で三宅茂樹都議、〇五年三月三日)と賛辞を送りました。民主党は「非常に力強い、そしてまた夢とロマンの持てるような新銀行だなというふうに感じております」(財政委員会で中村明彦都議、〇四年九月三十日)とほめちぎりました。
公明党は中小業者に不評の新銀行を「中小企業の味方」(「公明新聞」〇五年六月十二日付)と描き、都議選候補が「財政破たんした中小企業の方々、企業再生をめざす企業の支援もおこなう」(二十四日、石井義修都議)と宣伝しています。
■共産党事業凍結・暮らし優先に
新銀行東京をめぐっては、都が昨年二月に作成した長期収支計画(マスタープラン)とは別に、裏の計画書ともいえる「事業計画書」(昨年十一月)を作成し、都民と都議会をだまして開業したことを日本共産党都議団が暴露(四月二十日)。都民には、開業三年後に五十四億円の経常利益が出るとバラ色の計画を説明しておきながら、出資企業向けには経常利益は四億円と説明する――こんなゴマカシの手法が白日のもとにさらされたのです。
日本共産党は、国会でもこの問題を追及。五月十二日の参院財政金融委員会での大門実紀史議員の追及は、新銀行東京が、金融庁には、裏の「事業計画書」の方を提出していたことも明らかにしました。
開業までに五百億円集める予定だった民間からの資本金も二十四日までに百八十億円と目標を大きく下回っています。
都や銀行側が裏計画の存在を否定するなか、日本共産党都議団は四月二十日、独自に入手した「事業計画書」を記者会見で公表し、「裏の計画を都民に隠して開業したものだ」と追及。六月二日の都議会本会議で吉田信夫都議は「これ以上、傷口を広げないためにも、困っている中小企業には役に立たない新銀行の事業を凍結し、資金を回収し、福祉や教育、中小企業のために使うべきだ」と迫りました。