2005年6月29日(水)「しんぶん赤旗」
イラク主権「移譲」1年
米国民の58% 戦争遂行を不支持
イラク侵略戦争とその後の米軍の駐留のもとでイラクの状況が泥沼に陥っているなか、米国民の世論や議会に大きな変化が生まれています。
今月二十七日発表のUSAトゥデー紙・ギャラップ共同世論調査によると、ブッシュ大統領のイラク戦争遂行を支持すると答えた人は40%で不支持は58%。同大統領の不支持率も過去最高の53%に達しました。十三日発表のギャラップ社の世論調査結果では、米軍のイラク撤退支持は59%にのぼっています。今年一月のイラク総選挙直後の二月の調査の49%から10ポイントも増大。同社が二〇〇三年十二月の調査でこの設問を始めて以来、最高となりました。
■即時撤退の決議案
議会では、一月に民主党議員二十五人が米軍の「即時撤退」を求める決議案を提出。今月十六日には、共和党の議員も加わって、「撤退」に向けた段階的な政策決定を大統領に求める決議案を出すなど、与党内からも撤退論が起きています。
軍事的にも、政治的にもブッシュ政権のイラク政策が行き詰まっているためです。
ブッシュ氏が約束した「安定」はいまだにもたらされていません。フセイン政権の大量破壊兵器保有というイラク戦争の口実が完全に破たんし、ブッシュ氏は今年一月の一般教書演説で「民主主義を中東に広げる」という新たな「口実」まで持ち出して、戦争とそれに続く占領を正当化せざるを得ませんでした。
イラク駐留の長期化は、完全にブッシュ政権のもくろみ違いとなっています。制服組はもともと駐留には大規模な兵力が必要だと主張していましたが、ラムズフェルド国防長官が甘い見通しを示しました。この結果、駐留部隊の交代や装備の補充などのやりくりにも支障をきたし、予算不足を本年度の「追加予算」という形で手当てせざるを得なくなりました。死亡慰労金や年金を増額するなどの措置を発表しても、駐留軍の主力となっている陸軍は今年二月以来、四カ月連続で新兵徴募の目標を下回っています。
■犠牲者あと絶たず
米兵の犠牲者はあとを絶ちません。主権移譲後の〇四年七月から今年六月二十六日までに死亡した米兵は八百九十二人(別表)。イラク戦争開始後に死亡した千七百三十人以上の米兵のほぼ半数にあたります。
ブッシュ政権はあくまでイラク駐留継続を主張しています。イラクには十四万弱の米軍が駐留しています。
「われわれの軍隊はイラクの安定のために必要な限り、イラク政府がその存在を必要とし、求める限り居つづける」―二〇〇四年六月二十八日のイラク暫定政府への主権移譲の際、ブッシュ米大統領はのべました。
そして、二十四日、イラク首相との会談後の記者会見でも「タイムテーブルを示す道理はない」として、撤退時期の明確化を求める要求さえはねつけました。
ブッシュ大統領は「われわれの目標は明確だ。すべてのイラク人を代表する民主的で平和なイラクだ」といいますが、それはイラク国民自らが達成すること。米軍の駐留を続ける口実にはなりえません。(ワシントン=山崎伸治)
イラク主権移譲後の月別米兵死亡数
(米国防総省発表の集計)
04年7月 59人
8月 66人
9月 75人
10月 58人
11月 139人
12月 78人
05年1月 102人
2月 67人
3月 41人
4月 46人
5月 84人
6月 77人(26日発表分まで)
合計 892人