2005年6月22日(水)「しんぶん赤旗」
暮らしと都議選
盲導犬エサ代削つた金で…
「豪華視察」与党じゃ救われない
「僕にとって、盲導犬はなくてはならない存在。そのえさ代まで削ったお金で、自分たちはラスベガスに行くなんて言葉が出ない」。東京都在住で全盲の田沢芳行さん(54)は、八年来のパートナー―盲導犬・ラピスをなでながら、顔をそむけました。自民、民主、公明の各党都議が税金を使って、一人平均百四十八万円もの豪華海外視察をしていることに怒っています。(畠山かほる)
革新都政時代に制度化された障害者福祉施策の一つが、所得の少ない盲導犬使用者に支給されるえさ代などの飼育費補助です。
約三十年続いたこの制度を、「オール与党」に支えられた石原都政は二〇〇二年度から廃止しました。その額、一頭あたり月額六千七百円、年間予算はわずか六十四万円です。日本共産党が飼育費補助の復活を議会で要求しても、「適正に見直し(をした)」と拒否しています。
生きる光
「盲導犬がいなかったら、家に引きこもったままで、いまの自分はなかったと思う」。田沢さんは振り返ります。
失明したのは、三十二歳のとき。生まれつきの弱視で病気の進行が原因でした。絶望し「自殺を考えた」といいます。光を失った田沢さんに生きる希望と勇気をくれたのは、家族の支えと外出することで得られた社会的なつながりでした。そのかけ橋となっているのが、安全な歩行を助けてくれる盲導犬です。
盲導犬は無償で貸与されますが、飼育には費用がかかります。年間でみると、定期的な病気予防のための医療費に十数万円、えさ代に約五万円、ノミ取りの薬に口や耳の消毒、毎日使う全身用ブラシの買い替えなど…。犬に不調があれば、すぐ医師の診察を受けなければなりません。レントゲン一枚で一万円札が消えます。これらの費用は盲導犬使用者の全額持ち出しです(東京では、獣医師会の寄付により年間三万円の診療券が支給されています)。
経済的弱者が多い視覚障害者にとって、切り捨てられた飼育費(年八万四百円)の補助は切実なものでした。
田沢さんは、はり治療院を開業していますが、仕事が少なく経費を引くと収入はほとんどありません。障害者年金は家賃に消え、看護師の妻の収入で暮らしています。
「妻の収入が減って盲導犬を手放すことになったら、家から出られなくなって生活が成り立たない。精神的にも落ち込んでだめになるだろう。そんな仲間がすでにいるのではないか」。田沢さんは心配します。
福祉分野を中心に都の補助金の切り捨ては、百種類以上に及びます。
共産党を
「きっと、福祉が嫌いなんでしょう」というのは、東京視力障害者の生活と権利を守る会の山城完治事務局長です。「障害者福祉は福祉のなかでも一番最後に手をつけるところ。それを切り捨てるところまできたのがいまの都議会です。障害者福祉の切り捨ては、健常者にとっても暮らしにくい社会になっているあらわれだと思います」
田沢さんはいいます。「こんな『オール与党』が幅を利かせる都議会じゃ、都民は救われない。福祉やくらしを守る先頭に立ってきた日本共産党の議席を一つでも多く増やす選挙にしたい」
東京都がすすめた福祉分野のおもな切り捨て
(1999年度と2002年度の比較。削減額 単位:万円)
生活環境改善普及事業 160
(車いす使用者席入場整理券発行業務停止など)
点訳・朗読奉仕員指導者等養成事業 40
(専門点訳奉仕員養成コース50人→30人)
視覚障害者用図書製作貸出事業 1000
(点字図書600冊→300冊、録音図書1800巻→900巻など)
あん摩マッサージはりきゅう師資格養成事業 1800
(ヘレンケラー学院に委託。64人→46人)
障害者カルチャー教室 700
(絵画、書道など6講座各40人の教室を廃止)
身体障害者地域活動育成事業 275
(激励観桜会、夏季海水浴事業への支援廃止)
人工肛門、人工ぼうこう用装具購入費助成事業(00年度末廃止) 602
(衛生処理に要する装具の購入費助成を廃止)
ワープロ講習会(00年度末廃止) 59
(在宅の視覚障害者に対するワープロ操作の講習会廃止)