2005年6月21日(火)「しんぶん赤旗」
点検 郵政民営化法案
株式処分
法案決めた後 解釈変える
郵政民営化をめぐる日米金融資本と自民党執行部の“対立点”は、民営化後の会社にグループの一体的な経営を保証するかどうかです。焦点は日本郵政株式会社(政府が三分の一超の株式を保有)が持つ郵便貯金銀行と郵便保険会社の株式の処分問題です。
郵政民営化法案では、金融二社への政府の関与をなくすことを求める日米金融資本の要求に沿った形で「日本郵政株式会社が保有する郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式は、移行期間(二〇〇七年四月一日から二〇一七年三月三十一日までの期間)中に、その全部を処分する」と規定しています。
●国民欺く欠陥●
この規定に関連して国会と国民を欺く欠陥が潜んでいました。
政府関与を断つためには、いったん「完全処分」したあと、金融二社株の保有を制限することが必要です。
郵政民営化準備室が作成した「株式保有に関する一般的規制について」という資料では、「銀行及び保険会社の株式については、日本郵政・郵便事業・郵便局の三社合計で、25%超の議決権を保有する場合、独占禁止法第九条(ガイドライン)に抵触する」とあります。
ここでは、金融二社の株式は、グループ経営に必要な25%を超えて買い戻し、保有できないという解釈です。
滝実法務副大臣のホームページも、郵政事業のグループ経営問題に触れて「独占禁止法の運用ガイドラインで親会社が金融事業とそれ以外の事業を子会社として保有するグループでは金融子会社の株は25%を超えて保有出来ない」との解釈がなされています。
自民党も民主党もこの解釈をもとに質問をおこなっていました。
ところが、この問題を日本共産党の佐々木憲昭衆院議員が追及すると、伊藤達也金融相は「50%を超えて銀行の株式を保有することはできない」と答弁しました。株式保有は25%ラインではなく、50%ラインまで可能であるとの解釈を示したのです。
独禁法九条は、企業に対して都銀並みの貸し出しがあることを想定しています。民営化されたばかりの郵貯銀行が都銀並みに貸し出しが拡大するとは想定できません。そのため、独禁法の規制対象になりません。銀行法上の持ち株規制が適用されるのです。
●竹中答弁と逆●
なぜ、与党議員を欺き、国会と国民を欺くことになったのでしょうか。佐々木議員の要求で政府が提出した文書で明らかにされました。
四月二十八日。独禁法を運用する行政機関の公正取引委員会との政府内の会合で、「郵政民営化における独占禁止法第九条に違反するか否かの判断は、ガイドラインの類型を形式的に当てはめるのではなく、同条の趣旨に照らして行う」との指摘を受けていました。
ところが、郵政民営化法案を閣議決定したのは四月二十七日です。民営化法案が独禁法に抵触しないことに気がついたのは、法案を決定した後だという大失態を政府は演じてしまいました。
金融二社は「国の関与が名実ともになくなる」(竹中郵政民営化担当相)どころか、国が三分の一の株式をもった日本郵政株式会社がトップとなる巨大金融コングロマリット(複合企業)のような巨大企業が誕生します。竹中担当相の答弁とはまったく反対の結果が生まれるのです。
●処分の「裏技」●
さらに問題があります。政府は郵便貯金会社による自社株買いも、「完全処分」の一形態として認めるといいます。
つまり、日本郵政株式会社は、郵貯銀行の株式を市場に完全に売却するのではなく、郵貯銀行に譲渡することも、株式の「処分」として認めるのです。
市場に売却されることのないこの株式は、移行期間が終了した一七年四月には、再び日本郵政株式会社に譲渡されます。
まさに、自民党執行部が求める株式の連続的保有と「完全処分」とが両立する“裏技”です。グループ経営の継続も可能となります。
法案に書き込まれた「完全処分」とは、まったくの「形式」にすぎません。