2005年6月19日(日)「しんぶん赤旗」

砂漠化が生活脅かす

国連報告 20億人、日本にも影響


 国連は十六日、世界の乾燥地域に暮らす二十億人の健康と生活が環境悪化によって脅かされているとする「生態系と人間の健康―砂漠化総合報告」を発表しました。同報告は国連が世界九十五カ国の科学者千三百六十人を動員して進めている「ミレニアム生態系評価報告」の第三弾。砂漠化が、世界で最も大きな環境問題の一つになっていると警告しています。

 同報告は、地球上の耕作地のうち43%が乾燥地帯にあり、気候変動や人口増加により砂漠化が拡大していると指摘。世界の貧困層の半分が乾燥地帯に住んでいます。こうした地域の乳幼児死亡率は出生千人に対し五十四人。他の開発途上地域の二倍、工業諸国の十倍となっています。

 ノルウェーの首都オスロでの報告書発表に当たって、イスラエル・へブライ大学のサフリエル教授は、「砂漠化は知識と科学の欠如によってではなく適切な政治統治の欠如によって起きている」と説明。「その理由は、(開発途上国の)政府が効率的でないことと、援助国が適切な方法で投資をしていないことの両方だ」と語りました。

 同教授は、砂漠化は地球的な問題であり、乾燥地域だけではなく遠隔地にも影響を与えることを指摘。モンゴルのゴビ砂漠の塵芥(じんかい)が日本やハワイの人々に影響を与え、サハラ砂漠からは年間十億トンの塵芥が大気圏に舞い上がっています。塵芥はバクテリアやカビの胞子を含んでおり、カリブ海でサンゴ礁に影響を与えていると語りました。

 報告は、乾燥地帯の10―20%がすでに悪化に向かっており、サハラ砂漠以南のアフリカと中央アジアは砂漠化に対して脆弱(ぜいじゃく)な地域だと指摘しています。また、わずかながら乾燥した地域は最も危険な地域だといいます。こうした地域は食料増産のための耕作可能地域とされますが、耕作地に転換することで不可逆的な損傷を与え、砂漠化を促進することになると述べています。

 報告は、乾燥地帯に住む住民のために最も適切で持続可能な生活方法は何かを政治家が熟慮する必要があると述べ、砂漠化を逆転するのではなく、拡大を防ぐ手段をとるよう勧告しました。その手段として土壌の流出を防ぎ、水資源を持続可能とし、植生を保つことを提案しています。

 同報告は、国連が三月三十日に公表した「ミレニアム生態系総合報告」、五月十九日に公表された「生物多様性条約に関する報告」に続くものです。


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