2005年6月12日(日)「しんぶん赤旗」
社会リポート
公明区議汚職で自公民
百条委設置否決、疑惑そのまま
東京・足立
東京・足立区議会副議長も務めた公明党の忍足(おしたり)和雄議員(62)=辞職=が保養所の業務委託会社選定をめぐるあっせん収賄容疑で逮捕・起訴された事件で、同区議会で真相糾明のための百条調査委員会設置提案が否決される事態が起きています。日本共産党の提案を自民、民主、公明が否決したことに区民から強い批判が出ています。
事件は、同区の保養所「湯河原あだち荘」の業務委託先選定をめぐり、二〇〇三年の夏から秋にかけて、区内の割烹(かっぽう)料理店「勇駒(ゆうこま)」が受注できるよう、公明党の忍足区議が区幹部らに働きかけ、発注情報などを漏らした見返りに二回にわたり現金三百万円を受け取ったというもの。
七日の議会で、百条委員会設置提案をおこなった日本共産党の大島芳江区議は、「区民の税金を食い物にする許しがたい行為」と批判。「強力な調査権を発動し再発防止につなげることが議会の責任」とのべ、地方自治法百条により偽証告発もできる百条委の設置を求めました。
しかし、当初、百条委設置を要求していた民主党もふくめ自民党、公明党が反対。疑惑の当事者の公明党は、反対理由さえ説明しませんでした。提案は否決。地方自治法百十条にもとづく通常の委員会設置を全会一致で決めましたが、百条委のような権限はありません。「足立革新区政をつくる会」の内野東彦事務局長は「真相解明を求める区民の声を踏みにじるものだ。百条委設置を求める署名も急速に広がっているし、今後も疑惑究明を求めていく」と話します。
別の公明前区議の関与も
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議会に求められるのは情報を漏らした区側の問題を含む疑惑の全容解明と再発防止です。起訴された忍足議員以外の関与を指摘する声もあります。その一人が同じ副議長経験者の西口喜代志・前公明党区議です。
西口前議員は、二〇〇三年三月議会の予算特別委員会で、保養所について「食事が以前に比べて数段悪くなっている」といった区民の「声」を紹介し、「これはちょっと考えものなんじゃないか」と強調。「苦情が多いということになりますと…契約期間等の短縮ということも考えられますか」とせまり、助役から「成績が悪いということならば、翌年度の契約についてはそのことを踏まえて取り組まなければならない」との答弁を引き出しました。
公明議員に攻撃されたのは「東京ケータリング」(東京・渋谷区)。随意契約で〇五年まで五年間請け負うことになっていました。
西口前議員が紹介した「声」とはまったく相反する調査結果があります。区が実施した保養所の利用者アンケートです。四百三十九人が回答した二〇〇三年の集計結果によると、夕食の味付けについて「大変良い」が百二十六人、「良い」二百三人、「悪い」は三人だけでした。本紙の取材に区広報課長は「食事がまずいと断定できる数字ではなかった」と回答。当時の担当課長は「業者の変更はトータルな判断だが、一番大きいのは(西口)議員による議会での質問だ。これは重く受け止めざるを得ないものだった」と振り返ります。
西口質問をきっかけに流れがかわりました。区は契約方式を変更、〇三年十一月に審査をおこないました。このとき、引退した西口前議員にかわって出てきたのが忍足議員でした。
業者選定直前に、当時の区幹部を副議長室に再三にわたって呼びつけ、選考基準や見積もり価格などの発注情報をもらすよう迫り、「勇駒」を受注させろと圧力をかけたのです。情報を事前に入手していた「勇駒」が価格上限ギリギリの一億五千四百三十五万円で落札しました。
「結果を聞いて『えっ』と驚きましたよ。勇駒は割烹料理屋としては老舗ではあるものの、保養所運営の実績はない会社です」と選考に参加した業者は指摘します。
東京ケータリング社の幹部は、「うちは他の区の保養所も運営している。それなのに『食事がまずい』などと質問された上に、選考審査では高い価格を提示した業者が選ばれる。こんな汚いやり方がありますか。許せない」と怒りを隠しません。
西口前議員は本紙の問い合わせに「話すことは何もない」と取材を拒否しています。