2005年6月11日(土)「しんぶん赤旗」
出生率が伸びた村
長野・下條村
格安の村営住宅/中3まで医療費無料
出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの平均数)が上昇している村が長野県にあります。一・八〇(一九九三年〜九七年の平均値)が一・九七(九八年〜二〇〇二年の平均値)に伸びています。〇四年単年では村独自の計算によると二・五九にもなります。一・九七は県下では最高。全国平均の一・二九とくらべてもその高さは際立っています。
(石川士朗)
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この村は、長野県の最南部・下伊那郡のほぼ中央にある下條村。人口四千二百人余。天竜川に注ぐ白又川の谷沿いに集落が集まっています。村役場から十分もあればどの集落にもいける小さな村です。
若者定住を促進
村内の各所に茶褐色のタイルにおおわれた三階建てマンションが八棟建っています。村が建設した若者定住促進の村営住宅です。一戸建ての住宅を含めると百六十八戸にもなります。部屋の広さは2LDKで約六十三平方メートル。家賃は三万六千円と格安。隣りの飯田市で同じ条件の部屋を借りようと思えば、倍の家賃になります。
同村営住宅に住んでいる代田麻由さん(26)は、零歳児と二歳児の子育て真っ最中。「子どもが生まれたらここに住もうと決めていました。それにこの村は子どもの医療費が無料なんです。ちょっとした風邪でも病院に行けますね。安心して子育てできます。みんな、子どもは二、三人ほしいといっていますよ」と語ります。
下條村では子育て支援として子どもの医療費無料化を段階的に拡充し、〇四年度からは中学生まで広げました。しかも全国どこの病院にかかっても適用されます。
下伊那郡内では過疎化・高齢化が進んでいる町村が多く、かつては下條村も同じでした。六五年に四千五百人を超えていた人口が九一年には三千八百人台に減ってしまいました。九〇年から若者定住促進住宅の建設を始め、昨年は三十五年ぶりに四千二百人の大台を回復。全人口に占める若年(十四歳まで)の割合が17%と、県内で一番子どもの比率が高い村になっています。
健全財政が力に
現在四期目の伊藤喜平村長は「なんとか人口が減らないようにと総合的なサポート策を考えてきた。五、六年でやっと手ごたえを感じるようになった。村に若者が増えることは、地域に新しい風が吹くことです。介護や教育に力を入れ、弱者への援助をしていくためには、財源をどうするかが一番大変でした」と語ります。
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現在、財政の健全さを示す起債制限比率が1・7%と、これまた県内一位です。合併浄化槽方式により借金なしで下水道事業を行えたこと。生活道路や農道などの舗装・改修工事を村が資材費を出し住民自らが行うことで、大幅に少ないコストで借金もなくできたこと。創意を生かしたこれらの節約でつくり出した財源を子育て支援や教育、福祉の維持にまわしてきました。
日本共産党の折山領村議は言います。「子どもへの医療費無料化は、日本共産党も長年要求してきたこと。子育て支援策をさらに充実させ魅力ある村にしていきたい。昨年、下條村では合併問題が浮上し、村民アンケート調査の結果、自立を選択しました。小さくても、住民が希望を持って暮らせる自治体になるようがんばっていきたい」