2005年6月9日(木)「しんぶん赤旗」
南海電鉄
運転士まで契約制
先月から実施 「初耳だ」と国交省
鉄道、航空機など安全性の後退が問題になっている輸送業界で、南海電鉄が一年更新の契約制運転士等の導入を開始したことがわかりました。他の私鉄で、分社化による駅掌、車掌の契約社員制度は導入されていますが、運転士は初めてのケース。安全問題に直結する運転業務で、身分保障が不安定な契約制を導入することに、労働者から批判の声があがっています。
南海電鉄によると、契約制は正社員や嘱託社員の採用とは別に、五月から実施されています。
職種は運転士、駅掌、車掌、工務、電気、車両点検が対象。今年は四十人が採用されました。条件は四十歳以下の男女で、一年ごとに四回更新でき、最長五年間勤務できます。二、三年目の勤務査定等と本人の希望で正社員になることもできます。
毎年更新して最長の五年間勤務する場合、通常は最初の一年が駅業務、次の一年が車掌で、運転士には登用試験を受けて三年目からなることができます。
南海電鉄は契約制の運転士の採用に関し、「鉄道事業法第二五条(列車の運行の管理等の受委託)によって、国土交通大臣の許可が必要であるが、契約社員は外部委託社員ではなく当社の社員であり、問題はない」と説明。また安全性については「正社員と同等の安全教育を実施し、万全を期していく」としています。
国土交通省鉄道局安全対策室は「初めて聞いた。鉄道事業法は関係ない。『動力車操縦者運転免許』を保持し、実地教育を含めた安全教育を受けた者が運転士になることができる。今回のケースは会社側が鉄道の安全性をどう考えているかを聞かないと、何ともいえない」と話しています。
南海電鉄に働く労働者は「コスト削減の柱として社員の三割を契約制にしていく方針だと聞いているが、不安定な雇用条件で生活面や精神面で業務に支障がでないとは限らない。このようなやり方がJRも含めてすべての私鉄に波及していくことになるのではないか」と危ぐしています。