2005年6月8日(水)「しんぶん赤旗」

主張

東アジア共同体

分断と対立でない未来志向で


 自由貿易協定(FTA)を柱とした経済連携協定(EPA)の交渉開始、東アジア共同体構想の実現努力でインドネシアと合意したことにより、日本のEPA締結国は二、交渉国は五になりました(締結国のメキシコ以外は東アジアの国々)。日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)とも交渉を開始しています。ASEANと日中韓の東アジアで、域内貿易比率は五割を超え、日中貿易額が日米貿易額を上回るなど、経済的な相互依存関係が深まっています。そのなかで「東アジアコミュニティ(共同体)の構築」(二〇〇三年十二月の日本ASEAN首脳会議宣言)が共通の目標になっています。

平等、互恵の地域協力

 東アジア共同体の具体的な構想は固まっているわけではありませんが、経済協力をはじめ多面的な協力関係を築きながら共同体形成をめざすという点には、官民問わず共通性がみられます。

 ところが最近、東アジア共同体の共通目標、理念との関連で、特定の体制や理念を前提条件とする議論が一部にみられます。「政治体制、理念が違う国との関係は、それぞれの国がどう進化するかで考える」と町村外相が発言。政官財学の関係者でつくる東アジア共同体評議会では、「抽象的な『平和、繁栄、進歩』」という理念でなく「自由と民主主義」の理念を掲げるべきだとして、事実上資本主義化を求める意見も表明されています。

 FTAにせよEPAにせよ、もともと政治、経済制度や発展段階の違う国々が、相互の関係でも各国内の調整でも、地域的な協力の利点を生かしてそれぞれの利益を増進しようとするものです。東アジア共同体へつなげようとするなら、二国間でも、多国間機構との間でも、違いを認識しつつ、多面的な協力の枠組みをつくっていく必要があります。特定の体制や理念の一致を条件にするようでは、前に進めることはできません。

 地域協力を推進するにあたっては、東アジア域内でも米州など他地域とも、分断や対立でなく、平等、互恵の開かれた関係をつくることが求められます。平和に共存する関係を築かなければなりません。

 その条件を広げるうえで注目されるのは、アジアの多様な国々が、不安定要因を抱えながらも、東南アジア友好協力条約(TAC)などさまざまな方法で、平和協力の関係を強めていることです。

平和への努力を明確に

 ASEAN十カ国と日中韓が年末に開催する東アジア首脳会議には、インドとオーストラリア、ニュージーランドの参加も検討されています。米国からは「米国の存在がないのは困る」(アーミテージ前国務副長官)という表明があります。

 アーミテージ氏は「日本などの友好国が米国を代弁してくれるだろう」ともいっています。米国の代弁者にとどまるのか、それともアジアの一員として、アジアの平和努力に加わり、平等、互恵の相互発展をめざす自主的な外交を貫くのか。日本政府の姿勢が問われます。

 この地域を侵略、植民地支配した歴史をもつアジアで唯一の国として、日本が憲法の平和原則を守り、アジアの国々、人々と平和に共存していくことは、東アジア共同体に向かって土台をすえることになります。侵略戦争正当化となる小泉首相の靖国神社参拝問題の克服は、未来に向かってのアジア協力にとって避けられない日本の課題です。


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