2005年6月6日(月)「しんぶん赤旗」
好調ロッテ
本音ひきだす“バレンタイン流”
信頼感が強さ支える
12球団で40勝一番乗り。昨年まで9年連続でBクラスだったロッテが今季、快進撃を見せています。パ・リーグ首位を走るその好調の裏には何があるのでしょうか――。(栗原千鶴)
チーム防御率は12球団唯一2点台の2・63、チーム打率も2割9分3厘と12球団トップで、今季は投打が、がっちりとかみあっています。
もともと投手力には定評がありました。勝ち頭の渡辺俊の8勝をはじめ、小林宏が7勝、けがから復活した小野が6勝をあげるなど、6人の先発投手陣が絶好調。中継ぎや抑えも安定しており、二軍にいい投手がいても上がってこれないといわれるほど層が厚い。
課題の打撃で若手が伸びる
課題だった打撃では、若手が伸びてきました。得点圏打率4割7分7厘の西岡は3年目。「いい刺激になるし、緊張感がある」と主軸をつとめる福浦も若手の台頭を歓迎します。外国人選手も好調でフランコ、ベニーは打率3割を超え、昨年不本意な成績に終わった李承〓(イ・スンヨプ)も、5試合連続で本塁打を放ち、調子を上げてきました。
「走塁に対する意識も変わった」というのは高橋慶彦コーチ。今季の盗塁数は46個で、12球団で1位。選手たちは、試合後にも走塁練習を惜しまないといいます。
一人ひとりがレベルアップした今季のロッテ。その個性をうまく引き出しているのが、昨年就任したバレンタイン監督です。高橋コーチは「監督は失敗を責めない。盗塁で失敗するとチャンスをつぶしたと文句をいう監督も多いが、失敗を責められたら選手は何もできない」と話します。
“バレンタイン流”といわれる野手の日替わり先発も、選手が力を出し切るためのものです。
「シーズンは長い。リフレッシュも必要」と主軸には適度な休養を与えます。一方で、多くの選手に先発出場のチャンスが回ってくるため、各自のモチベーションも高い。
「選手がいい状態でいてくれることがチームにとってよいこと」と監督。最初は戸惑いがあった選手たちも、今季は「休養」と受け入れられるようになりました。
渡辺俊はいいます。「これまで首脳陣に使ってもらえなくなるのが不安で、けがをしても言えなかった。いまは痛ければ痛い、疲れたら疲れたと本音が言える」。右肩などにけがを抱える12年目の大塚も「監督は『無理せずに君のやれることをやればいい』といってくれる。これまでと違って、環境がいい」と話します。
コンディショニング担当の高橋純一さんは「選手がここが張っている、ここが痛いと言いにくるので、早く手当てができる。体のことは選手自身が言わなければ分からない。信頼関係が大切」といいます。
選手、指導者、そしてスタッフがプロ意識を持ち、役割を果たしながら互いを尊重し合う――そんな信頼関係がいまの強さを支えています。
選手も監督もファンと交流
選手を後押ししているファンの存在も忘れてはなりません。好プレーには、相手選手にも拍手を送るファンは12球団一といわれます。選手もそんなファンに誇りを持ち白星をプレゼントしたいという気持ちが強い。
「“夢の実現”を手伝ってほしい」と話すバレンタイン監督は、自らファンサービスの先頭にたち、サインに応じます。
球団も、ファンサービスの充実をはかってきました。球場正面に野外ステージを設置。子どもが楽しめるロッテキャラクターのショーを試合前に開催。チームが勝てば試合後、ヒーローの選手が登場することも。
試合中のちょっとした時間も飽きさせません。グラウンド整備の時間にキッズオリンピックやホームラン競争など、ファンが参加できる企画が行われ、ナイターでは打ち上げ花火もあります。
土曜日のデーゲーム後の「カメラデー」には驚きました。試合直後の選手やコーチらが1時間以上にわたって、グラウンドでファンとの写真撮影に臨みます。ほかにも子どもによるベースランニングなど、工夫があふれています。
ロッテのベンチには、背番号26のユニホームがかかっています。込められた思いは、ファンはベンチ入り25人の選手と一緒にたたかう26番目の選手――というもの。大きな目標に向かってファンとともに走り続けます。(記録は4日現在)