2005年6月6日(月)「しんぶん赤旗」
残業代不払い改めます ヤマト運輸
“わかりやすい制度に”一部変更
労働者と本紙追及実る
宅配便業界最大手のヤマト運輸(本社東京)が、これまでつづけてきた「月四十時間を超える残業代は、支払わない」というサービス残業(ただ働き)の仕組みの一部を改めることがわかりました。本紙の連載(「過労満載の現場 クロネコヤマトにみる」二〇〇四年十月二十四日から二十八日)での告発が実ったものです。サービス残業に苦しんできた労働者から「一歩前進だ」と喜びの声が寄せられています。
ヤマト運輸では、例えば、月に百五十時間の残業をしていても、賃金明細には残業(超過勤務)は七十五時間と記載され、しかもそのうちの四十時間分だけが「超勤手当」として支給されていました。
会社は「四十時間を超える残業分は、あらかじめ基本給に月十五時間三十分(準社員は七時間五十分)の残業代を組み入れてある。それでも足りない分は、出来高払いのうちのかなりの部分は残業代として引き当てる」(本社人事企画課長)と説明していました。
残業代は、所定の労働時間をこえて働かせたペナルティーとして割り増して支払うもの。基本給や出来高に組み込むものではありません。労働問題に詳しい弁護士は「明確に区別すべきだ。法律上は通用しない」と本紙で指摘していました。
ヤマト運輸は、本紙の取材に対し、出来高払い分で残業代を引き当てるやり方はやめると答えました。変更の理由について、同課長は「これまでも法律上問題はなかったと認識しているが、社員にわかりやすい制度にした」と説明。
この変更で、先の例でいえば、会社側が、「基本給に組み入れてある」と主張する部分を除く十九時間三十分の残業代が支払われることになります。
根絶へ さらに運動 建交労
職場にある建交労(全日本建設交運一般労組=全労連加盟)ヤマト運輸支部は、会社のサービス残業を強制する仕組みを団体交渉で追及し、改善を求めるとともに、労働局・労働基準監督署に何度も告発してきました。
組合員で、現役のセールスドライバーの杉山和男さん(57)は「これまで組合としても十数年間、サービス残業問題を追及してきました。是正にむけて、大きく前進させた『しんぶん赤旗』の連載は、会社にも大きなプレッシャーになったと確信します」といいます。
しかしヤマト運輸のサービス残業を労働者に強制するシステムはしっかり残っています。ポータブルポス(略称PP)という個人端末を起動させている時間しか労働時間としてカウントされず、PPを起動させる前と終了後の労働時間は、サービス残業になります。
同支部の森本国明委員長は「会社の無法ぶりを明らかにし、粘り強く運動していけば、要求を前進させることができると実感しました。多くの労働者が分からないまま、ただ働きをさせられていた仕組みが、かなり分かるようになりました。運動を広げ、サービス残業の根絶のために頑張りたい」と話しています。