2005年6月1日(水)「しんぶん赤旗」
米・イラク軍が首都軍事作戦
犠牲と混乱拡大
武装勢力の攻撃激化
【カイロ=小泉大介】米軍とイラク軍が五月二十九日に首都バグダッドで開始した「武装勢力掃討」の大軍事作戦は、表向き「外国人武装勢力の摘発」が目的とされています。しかし米軍は三十日、イラクのイスラム教スンニ派の政党党首を一時拘束、占領に批判的な勢力の一掃という作戦の真の目的が鮮明になっています。
一方で、作戦開始に対抗するかのように、武装勢力の攻撃やテロが激化する兆候をみせています。
「稲妻作戦」と名付けられた今回のバグダッド軍事作戦は、米軍一万人、イラク軍四万人の計五万人の部隊を動員した空前の規模。六百七十五の検問所を設けて封鎖状態にしたうえで、市東部を七地区、西部を十五地区に分け、それぞれローラー作戦で武装勢力や武器製造工場などの摘発にあたるとしています。二十九日だけで五百人の「武装勢力」を拘束したと報じられました。
米軍は三十日、スンニ派の最大政党で、一月末の暫定国民議会選挙をボイコットしたイラク・イスラム党のアブドルハミド党首の自宅を襲撃し、同党首を逮捕しました。批判の高まりに同軍は「誤認」逮捕と認め、同日中に釈放しました。
米軍は五月初旬以降、イラク西部に数千人の部隊を投入し、大規模掃討作戦を展開してきました。これは多数の民間人犠牲を出し、武装勢力の攻撃を激化させるだけの結果に終わっています。
多くが砂漠地帯で人口も数万から数十万の西部の各都市に比べ、今回の作戦は人口約五百六十万の密集地。作戦による被害は計り知れないと予想されます。
米軍とイラク軍にたいする批判はすでに多くの住民の間で高まっています。
「封鎖や無差別爆撃で治安が回復できないことはこれまでの経過が示している。新政府が治安回復に真剣だとはとても思えない」(バグダッド大学のフセイン・アルファルジ教授)、「スンニ派抵抗勢力のなかには、米軍やイラク治安部隊への攻撃を停止し、政治参加の準備を開始した組織もある。今回の作戦が計画通り実施されれば、これらの組織を再び武装抵抗に向かわせ、混乱を拡大するだけだ」(イスラム党幹部のイヤド・アザウィ氏)などの声が上がっています。
バグダッド南方ヒッラでは三十日、連続自爆攻撃により警官ら約三十人が死亡、百人以上が負傷しました。二十九日にも、バグダッド南方ユスフィヤで武装勢力の攻撃でイラク兵九人が死亡するなど、首都周辺で約三十人が死亡しています。
四月末の移行政府発足後のイラク人死者は約七百五十人に達し、米兵死者は七十人を超えています。