2005年5月30日(月)「しんぶん赤旗」
朝礼の唱和
「安全」の文言なし
JR西 同業他社に負けるな
百七人の死者を出したJR西日本で、事故発生まで職場の朝礼で唱和させられていた経営理念には「安全」の文言が一切なく、「わが国のリーディングカンパニー(業界の主導的な立場にある企業)として、社会・経済・文化の発展に貢献する」と強調するなど、JR各社のなかでももうけ第一の経営姿勢が際立っています。
この経営理念にそって、社員の合言葉にしているのが、「同業他社をしのぐ強い体質づくり」。「同業」とは他のJR、「他社」は私鉄をさすといわれています。各職場では、“今日も同業他社に負けるな”と現場長が朝礼で訴えています。
他のJRの経営理念や社是をみると、「安全・正確な輸送とまごころをこめたサービス」(JR東日本)、「安全輸送に徹します」(JR北海道)、「安全・正確・快適な輸送を提供するとともに心のこもったサービス」(JR四国)とそれなりに安全やサービスを掲げています。この点でもJR西日本は異質です。
JR西日本が作製した『メッセージで読むJR西日本十年のあゆみ』には、歴代の会長や社長ら経営陣が利益第一で突っ走ってきた経営姿勢の軌跡が読みとれます。
国鉄が分割・民営化されJR発足一年の一九八八年三月、村井勉会長は「経営理念を朝礼だけのお題目だけに終わらせずに、トップ以下総動員してリーディングカンパニーをめざさなければなりません」とのべ、そのために「まず安全第一」を掲げ、第二に「収益」をあげていました。
しかし翌八九年には、村井会長は、国鉄時代の赤字が民間になった途端に黒字になったとして、「民営化によって、仕組みと心がまえが変わった」と称賛しました。
角田達郎社長は、JR東日本や東海と経営環境に差があるとし、「差をはねのけて、リーディングカンパニーとなるためには、同業他社をはるかにしのぐ社員のヤル気と能力がなければ、到達し得ないのである」とげきを飛ばしました。
改善命令や警告を隠ぺい
JR西 労組との安全会議に背
九一年五月、四十二人が死亡した信楽高原鉄道での正面衝突事故が発生しました。
この事故以来、JR西は、職場にある国労、全動労(現・建交労鉄道本部)、JR西労組(JR連合)、JR西労(JR総連)との労使安全会議を始めました。安全にかかわる問題は、この会議で労資双方が意見を出し合い、改善につなげようというものでしたが、実際は有名無実。改善の協議どころか、会社側は政府から改善命令や警告を受けても公表せず、隠ぺいしていました。
たとえば九九年以降、国土交通省・地方運輸局は、のべ十八回にわたって各支社に保安監査に入り、五回の命令や警告、文書指導を出しました。
昨年八月には、事業改善命令を発令。山陽新幹線三原―広島駅間の線路保守の定期検査で二〇〇三年度に実施したという検査日が、実際とは違う日を記録していたり、同線の橋りょうについて、三十三カ所が検査未実施にもかかわらず、実施したと報告していました。
これに対しJR西は十月、垣内剛社長名で「違反を二度と起こさないよう改善措置を講ずる」とした報告書を中国運輸局長に提出していました。
職場では、「安全を軽視し、もうけ第一で突っ走ってきたJR西の隠ぺい体質を象徴している」「会社のいい分をうのみにし、まともに追及してこなかった政府・国交省も責任は重大だ」との声が広がっています。
JR西日本の経営理念
JR西日本は、人間性尊重の立場に立って、労使相互信頼のもと、基幹産業としての鉄道の活性化に努めるとともに、地域に愛され、ともに繁栄する総合サービス企業となることをめざし、わが国のリーディングカンパニーとして、社会・経済・文化の発展、向上に貢献します。