2005年5月29日(日)「しんぶん赤旗」

ナチス強制労働

旧ソ連分補償ほぼ完了

ドイツ・オーストリア基金


 【モスクワ=田川実】第二次世界大戦中ナチス・ドイツに強制労働させられた被害者のうち旧ソ連各国に在住する約二十五万人への補償一時金の支払いがほぼ完了しました。補償基金であるドイツの「記憶・責任・未来」とオーストリアの「和解・平和・協力」が二十七日発表しました。

 両基金は、ロシア側の受け皿である「相互理解と和解」基金を通じて二〇〇一年から被害者に支払ってきました。総額は三千六百万ユーロ(約四十八億六千万円)に達したといいます。

 収容所への移送時に妊娠していた女性や、強制労働などがもとで重傷・重病となった人には加算があります。本人死亡の場合は遺族に支払いました。

 基金は、一時金の支払いだけでなく、元被害者らをドイツに招き、学校の生徒ら若者との交流を行っています。「記憶・責任・未来」のギュンター・ザアトホフ運営委員は「被害者が受けた苦しみを少しでも軽くしようと努力してきた。一人も残さず補償したい」と語りました。

 ドイツ(西独)は戦後、ナチスの迫害による犠牲者に補償してきましたが、強制労働への補償は、働かせた企業がなかなか責任を認めなかったことが響き、遅れました。加えて、旧ソ連とは長年対立が続いたため補償に関する本格的な検討が始まったのは一九九〇年代になり、政府と企業の出資で基金が設立されたのは二〇〇〇年でした。

 オーストリアは大戦中ナチス・ドイツに併合され、ドイツの一部として強制労働させた責任をとって基金を設けました。

 ソ連が、強制収容所にいた自国民を「敵ナチスへの協力者」「裏切り者」として存在を事実上無視したことも補償を遅らせる原因となりました。


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