2005年5月26日(木)「しんぶん赤旗」

異議あり 障害者自立支援法案

人としての生活うばう

服や娯楽費用も必要


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みんなで食べる昼食=身体障害者療護施設「大地」

 国会で審議中の障害者「自立支援」法案。応益(定率)負担導入で、施設に入所・通所している障害者は、利用料の一割など、大幅な負担増に。生活を破壊し自立を阻むことになると、障害者と家族に不安が広がっています。(川田博子)

 「負担が増えれば、何を削ればいいのでしょう」。埼玉県越谷市の林たみ子さん(56)は、ため息をつきます。

400円しか残らない

 障害者が暮らし自活するための技術を身につける施設「太陽の里」に入所中の息子(29)は、重度知的障害、強度行動障害、自閉症があります。息子の収入は月八万三千円の障害基礎年金のみです。現在は、施設の居住費と食費で月四万八千九百円を払っています。強いこだわりがあるために息子が毎日、何回も自販機で購入する缶コーヒー代、てんかんの通院治療費も必要です。

 法案が成立すれば、利用料の一割・二万四千六百円に食費四万八千円、水光熱費一万円を合わせて、実に八万二千六百円にも。年金のお金は四百円しか残らなくなります。さらに公費医療費負担制度の改悪で、てんかんの通院治療費も、現行の医療費の5%が10%に、負担増となります。

 たみ子さんは、「息子は自立のために施設で暮らしているのに。被服代や娯楽のためのお金など、人間としての楽しみも必要なはずです」とあきれます。夫のわずかな厚生遺族年金でのアパート暮らし、息子の生活費を補う余裕はありません。

自分だけでも大変

 障害者が暮らす身体障害者療護施設「大地」に、全身まひで知的障害の娘(33)が入所している同県川口市の新井たかねさん(58)も、法案審議の行方が心配の種。娘の収入は、障害基礎年金・月額八万三千円のみですが、同じく八万二千六百円の負担になります。

 「『応益負担』導入に食費や水光熱費の自己負担など、介護保険制度改悪とまったく同じです。国がすすめる社会福祉への攻撃が、ここまできたかという思い。結果的に、障害者本人と家族の負担が増え、『自立』ができなくなってしまいます」と話します。

 同施設に入所中の障害者の親には、七十代、八十代の人も少なくありません。自分の暮らしで手いっぱいなのに、負担増なんて…。「応益負担導入に反対」―新井さんたちはさらに声をあげていくことにしています。


厳しい障害者の収入

 障害(児)者の年金・手当など一カ月あたりの公的現金収入は、五万―十万円未満が58・6%、三万―五万円未満が16・6%、一万―三万円未満が5・6%、一万円未満が12・3%―。

 NPO法人大阪障害者センターと障害者生活支援システム研究会が二〇〇四年九―十月に実施した「障害(児)者の社会的支援ニーズ実態調査」で、厳しい収入状況が浮かび上がりました。調査は、きょうされん、全国障害者問題研究会、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の協力を得て実施、四千三百五十二世帯が回答したもの。

 生計中心者は父親74・6%、母親10・4%、障害者本人8・1%など。生計中心者の年収は、三百万円未満が38・8%を占め、百万円未満の人も7・9%いました。

 障害者本人の作業所、授産施設や一般企業での就労にともなう年間収入は、五万円未満52・2%、五万―十万円未満24・4%と、七割以上が「年十万円未満」でした。

 現行の障害者支援費制度のもとでのサービス利用料負担は、月一万円未満51・4%、同三万円未満30・9%の順。障害があるために、ガソリン代や医療費、通院交通費、水道や電気など、特別な経費も必要です。

 介護者が高齢となり、収入減や体力の低下も大きな問題となっています。


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