2005年5月26日(木)「しんぶん赤旗」
主張
米牛肉輸入問題
安全性はBSE検査してこそ
厚生労働・農林水産の両省が、内閣府の食品安全委員会に、BSE(牛海綿状脳症)発生を受けて輸入停止している米国産牛肉の安全性について諮問しました。
国民も専門家も批判
米国産輸入牛肉と国内産牛肉との「BSEに関するリスクの同等性」を評価するよう、意見を求めています。
米国産輸入牛肉は、感染源が蓄積する危険部位を除外した生後二十カ月以下の牛に限るとしています。
政府は、国内のBSE対策について、食品安全委員会に昨年十月に諮問し、六カ月余の審議をへて、今月六日に答申を受けています。BSE検査の対象から生後二十カ月齢以下の牛を除外しても健康への影響は「非常に低いレベルの増加にとどまる」という内容でした。
今回の諮問は、この答申を前提にして、検査抜きの二十カ月以下の米国産牛肉と国産牛肉との安全性評価が“同等”となるよう、ねらったものです。
しかし、政府が前提にしようとしている国内の全頭検査の緩和に、国民の七割が反対しています。そのため、国内では、全頭検査が引き続き維持されます。政府が、「現場の混乱をなくすために必要」として打ち出した、「二十カ月齢以下の牛について地方公共団体がBSE検査を行う場合に、引き続き国庫補助を当分の間行う」という措置に、すべての自治体が応じるとしています。
国民も、自治体も全頭検査の維持を望んでいるのに、どうして、国内のBSE対策の基準を後退させなければならないのか―。政府は、この疑問にたいし、「国内対策と米産牛肉の輸入再開とは関係がない」と答えてきましたが、今回の諮問で、もはや関連性を否定することはできません。
政府が、国民をだましつづけてきたことは明らかです。答申を出した食品安全委員会のプリオン専門調査会の委員からも「結果的に違う説明をしてしまった責任を痛感している」「納得がいかないまま、月齢見直しの審議を行わざるを得なかったことも残念です」との声が相次いでいます。
全頭検査の緩和の手続きはまだこれからです。省令の改定のための国民からの意見募集を行っている最中です。国民やプリオン専門調査会の委員との信頼を回復するためにも、政府は、国内のBSE対策の基準から全頭検査をはずすことはやめるべきです。
米国産牛肉の安全性評価にあたっては、BSE検査の日米の違いを無視することはできません。
日本は、BSE感染牛を食物連鎖から排除するための検査(スクリーニング、ふるい分け)を全頭で行っています。また、感染の拡大状況を確認するための検査(サーベイランス、監視)を二十四カ月以上のすべての死亡牛で実施しています。
検査されずに出回る
ところが、米国は、監視のための検査を、歩行困難など感染の可能性の高い牛について三十カ月齢以上に限り実施しているだけです。その数もBSE発生を受けて強化したといっても、健康な牛を含めた年間のと畜頭数の1%程度とされています。米産牛肉は、ほとんど検査されずに出回っていることになります。日本国民が米国産牛肉の安全性に疑問をなげかけているのは、根拠のあることです。
「同等性」を評価せよというなら、政府は米国に日本並みの検査を要求すべきです。