2005年5月25日(水)「しんぶん赤旗」

外国軍の存在が治安悪化の主因

米軍のイラク占領2年

湾岸戦略研究所が報告


 【カイロ=小泉大介】アラブ・湾岸地域の諸問題を研究する代表的な民間シンクタンクの一つ、湾岸戦略研究所(本部ロンドン)はこのほど、イラク情勢について、民主的イラクの建設という米国の主張は「軍事占領を正当化するための言い分」にすぎず、多国籍軍が撤退日程設定を拒否すれば状況はさらに悪化すると分析した研究報告をまとめました。バーレーンのアハバル・アルハリージ紙十九日付が詳報しました。

内戦の可能性

 同報告は「米占領開始から二年―イラクはどこへ行くのか」と題するもので、イラクの治安悪化の二つの側面を指摘しています。その第一は、「米軍とイラク軍が『スンニ三角地帯』の諸都市にたいし強化している大規模な軍事作戦」。報告は「数千人を死傷させ、多数の社会基盤や家屋を破壊する巨大な人的大惨事をもたらしている」と指摘。第二の側面は「武装勢力による米軍やイラク軍、民間人にたいする攻撃」で、「イラクの統一に深刻な影響を及ぼす宗派間闘争の性格を帯びている」と指摘しています。

 またイスラム教スンニ派住民が今年一月の暫定国民議会選挙を棄権したことについて、「米軍によるスンニ派諸都市にたいする大規模攻撃が関係していたことは明らか」と指摘し、「議会におけるスンニ派代表の不在は、イラクの統一、治安上の多くの危険をもたらし、内戦の可能性も高めるだろう」と警告しました。

 報告は、議会でシーア派勢力が政府形成のため、クルド人勢力の「脅迫」をのまざるを得なくなっている状況などに注意をひきながら、国民的和解が実現できるかどうかは、新政府がスンニ派も含めたすべてのイラク人による対話を推進するかどうかにかかっているとみています。

さらに悪化も

 さらに報告は、外国軍の存在が現在の暴力と治安悪化のおもな要因であるとして、イラク国民の圧倒的多数が要求している多国籍軍の撤退日程設定の問題にも言及。昨年六月採択の国連安保理決議一五四六は、イラク政府にたいし多国籍軍撤退を要求する権利を与えているにもかかわらず、米英軍とイラク指導部が撤退日程の設定を行わなければ、「さらなる治安悪化と混乱を招き、内戦の扉を開きかねない」と強調しています。

 報告は、今後の恒久的な憲法の制定過程においても混乱は避けられないだろうと指摘。二年間におけるイラク占領は治安悪化と暴力の連鎖、政治プロセスの混迷、宗派間対立、経済と社会生活条件の悪化をもたらしたと結論づけ、「組織的犯罪、テロの拡大はイラクと周辺諸国の安全にたいする脅威となっている」と結んでいます。


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