2005年5月23日(月)「しんぶん赤旗」

小規模工事の登録制度

289自治体に拡大

中小業者に仕事、大助かり


 「仕事をもらって本当に助かった」「下請けでやった工事より金額が少なくても実のある仕事ができた」―土建の労働組合や民主商工会、自治体労働者の組合の運動と日本共産党地方議員の奮闘で、各地に「小規模工事等希望者登録制度」が創設され、その数289自治体(17日現在、全商連調べ)に及んでいます。業者の仕事確保や地域おこしに喜ばれている制度について、制度発祥地の埼玉と、北海道の取り組み、利用者の声を紹介します―。

土建が運動 自治体の8割で実施

物品購入まで広げたい 埼玉 

 埼玉土建一般労組は一九九九年から、仕事確保の運動に本格的に取り組み始めました。バブル経済崩壊後の不況で建設業者の経営環境が悪化し、倒産件数の増加や組合員の自殺急増など、せっぱ詰まった状況でした。この運動を通じて、各地で小規模工事等希望者登録制度をスタートさせ、現在では県内八十五市町村の八割を超える七十市町村で実施(埼玉土建調べ)しています。

 志木市で工務店を営む鈴木貞行さん(55)は今年春、小規模工事等登録制度で学校のバリアフリー化工事を二件受注しました。合わせて約百五十万円になります。志木市の制度では上限が百三十万円と高く、かなり大きな仕事も登録制度の対象となっています。ほかにも同制度で市の仕事を受注してきた鈴木さんは「以前は、小さな仕事でも特定の大きい会社にしか市の仕事が行かなかった。制度が始まってからは、かなりの規模の仕事でも、私のような小さい業者に回ってくるようになりました。市の仕事をもらえる業者が、確実に増えましたよ」と話します。

 多くの自治体に制度が広がる一方で、自治体間の“温度差”もはっきりしてきました。積極的に活用し、業者からも歓迎されている自治体がある一方で、登録手続きが煩雑などの理由で利用者が少なかったり、上限額が低いために業者側から不満の声があがったりしている自治体もあります。

 埼玉土建では現在、登録制度の内容改善をめざす運動を進めています。担当の常任書記、相田福次さんは「埼玉土建の運動が制度創設のきっかけとなった自治体が多いため、工事だけが対象になっている自治体が多くあります。発注方法の改善や上限額の引き上げなどに加え、民主商工会など商工団体とも協力し、制度を物品購入にまで広げていきたいと考えています」と話しています。

(埼玉・林秀洋)

市から仕事の電話 青森 

 青森民商婦人部長の小田とも子さん(66)=建築業=の話 毎年仕事は減り続け、昨年の新築は、店舗付き住宅一軒だけで、多い時には十人いた職人はいまは二人。そんな時だけに、市役所の仕事はありがたかったですね。

 昨年二月に登録したんですが、二月、三月、四月となんの連絡もない。「実績もないし」と思っていたところに五月に入ってから、小学校の遊具補修の話がきて、びっくりするやらうれしいやらで…。

 それから、市営住宅の風呂場の補修だとか駐輪場の鉄柱の補修だとかの仕事が回ってきました。一件数千円とか数万円の仕事から、市営住宅の部屋の補修という約四十万円の仕事もあり、昨年は二百万円ちょっとの仕事をすることができました。

 市役所の人からも「これまでより安くできて、感謝してます」といわれたんですよ。

 五十万円以下を百万円に引き上げることなど、改善の運動をしたいし、県にも実施を働きかけたいと思っています。


地元で公共の仕事うれしい

私も登録できそう 北海道石狩

 札幌北部民主商工会石狩支部は三年前に、全国で運動が広がりつつあった小規模修繕工事希望者登録制度の創設を求める要望書を石狩市に提出し、田岡克介市長との懇談を行ってきました。

 実際に、市発注の五十万円未満の修繕工事がどのくらいあるのか市に資料を提出してもらったところ、二〇〇二年度実績で建築(電気含む)、土木、管関係で五百五十件二千八百五十八万三千円でした。一件当たり約五万二千円の工事金額です。「これなら私たちにも十分にできる仕事」と確信を持ちました。

 各地の運動に励まされ、日本共産党の長原徳治市議とも連携し、運動をすすめました。

 昨年秋に二回目の要望書提出を予定していましたが、浜益、厚田村との合併問題があり、市長との懇談を延期。今年一月に再度要望書を提出しました。二月十八日の助役との懇談で、制度の実施に向け検討していることが明らかになりました。

 今年度から実施がきまり、四月十八日から五月十三日までが申請受け付けと市の広報に掲載されました。

 民商石狩支部では、三年越しで要望した制度を市内の中小業者に知らせ、みんなで登録しようとチラシを作製し、支部の会員が手分けして三千枚を配布。建設関連業者へダイレクトメールを送り、四月二十日に石狩市花川中央会館で説明会を開催しました。

 当日、チラシやハガキを見て参加した業者は二十三人。市契約課の佐藤博課長が制度の趣旨と申請手続きを説明。民商から要望が出されていたことにもふれ、「大いに市内の業者のみなさんがこの制度に登録をして活用してほしい」と訴えました。

 小規模修繕契約希望者登録制度は道内では旭川、帯広、北見、美唄市についでの実現で、札幌市近郊の自治体では石狩市が初めてです。

 参加者からは「まずは話だけでもと思ってきたけど、私でも登録できそう」「石狩で仕事はしてるけど、住民登録が今は厚田村にある。十月の合併後に登録できることがわかって良かった」など、期待の声が寄せられました。

 石狩支部の折居律顕支部長は「厳しい経済状況だけに仕事確保への期待もあるが、それ以上に、地元で公共の仕事ができるということ事態が、私たちにとってうれしいこと」と制度実現の喜びを語っていました。

 (札幌北部民商・大橋安佐子常任理事)


 小規模工事登録制度 地方自治法二三四条にもとづく「随意契約」の創造的な運用を図ることを目的に自治体が設け始めた制度。「小規模修繕契約希望者登録制度」「小規模契約希望者登録制度」と名称はさまざまですが、自治体が発注する土木、建築、電気、内装仕上げ、板金、塗装、ガラス、造園など多岐にわたる小規模工事に、今まで指名競争入札の参加資格登録をしていなかった人も登録できます。


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