2005年5月23日(月)「しんぶん赤旗」
暴力の犠牲続くイラク
宗教指導者殺害に抗議
3千のモスクを閉鎖
スンニ派
【カイロ=小泉大介】治安が悪化の一途をたどるイラクでは二十一日も各地で武装勢力の攻撃が発生してイラク人多数が死傷、四月二十八日の新政府発足後の死者は五百三十人を超えました。イラクの「復興」にあたる米当局は二十一日、治安の悪化が経済や社会基盤整備にも重大な影響を与えているとの見解を示しました。
現地からの報道によると、バグダッド北方バイジでは二十一日、内務省直属の精鋭イラク人治安部隊を乗せた二十車両が武装勢力の待ち伏せ攻撃をうけ、同部隊員八人が死亡しました。中部サマラでは同日、道路脇の爆弾の爆発で警官四人が死亡、ロケット弾攻撃でイラク兵一人が死亡しました。
このような状況下、イスラム教スンニ派の有力組織、イスラム聖職者協会の影響下にある約三千のモスク(礼拝所)は二十一日、民間人や宗教指導者の殺害に抗議して三日間の施設閉鎖を決定、実施しました。一部スンニ派指導者は、同派住民や宗教者にたいする攻撃にシーア派の武装組織が関与していると非難するなど、宗派間対立の拡大が懸念される事態ともなっています。
一方、米政府が主導する在バグダッドのイラク復興管理室は二十一日、占領開始から今年四月末までに米関連プロジェクトの請負労働者二百九十五人が殺害されたことを明らかにしました。施設を守る武装警備員の人件費など警備関連経費もふくらむ一方で、復興経費全体の16%にも上っているとしています。
イラクでは現在も戦争により破壊された生活インフラの復旧が停滞したままです。先に国連などがおこなった調査によれば、85%の国民が慢性的な停電に不満を訴えています。
復興管理室のテイラー室長は会見で、「やらなければならない仕事が山ほどある」「危険な場所での仕事をいとわないはずの石油会社までイラクでは二の足を踏んでいる」などとのべ、電気やその他の住民サービスが復旧する時期を予測するのは早すぎるとの立場を示しました。