2005年5月21日(土)「しんぶん赤旗」

主張

障害者支援法案審議

応益負担に“異議あり”噴出


 衆院で審議されている障害者自立支援法案にたいし、障害者・家族から懸念の声があがっています。

 障害者の福祉サービス利用の負担は所得に応じた「応能負担」です。これをサービス量に応じた「応益負担」に変え、一割の定率負担や施設利用者の食費負担を導入する―。所得の低い人や障害の重い人を痛めつける、こんなやり方に批判が集まっています。

自立を阻害するだけ

 政府は、「きめ細かな低所得者対策を導入したい」といいます。しかし、それをしたとしても、たとえば、家事援助や身体介護、移動介助などホームヘルプサービスの負担は、平均で月千円から四千円へと四倍にもなります。また、通所施設の場合、食事負担も加わり、月額千円が一万九千円と十九倍です。

 障害が重く、より多くの支援・サービスが必要な人は、負担増の影響は甚大です。政府は「収入に応じた月額負担額の上限を決める」といいます。

 しかし、政府が検討している月額負担上限額は、障害基礎年金一級(八万三千円)相当の収入の人で二万四千六百円、同二級(六万六千円)相当の収入の人で一万五千円です(いずれも食費は別)。

 負担は収入の二―三割に当たります。日本共産党の山口富男議員が衆院厚生労働委員会で追及したように「障害者の生存権侵害に踏み込むもの」です。

 「上限の根拠」を問われて、厚生労働省は、「他の社会保障制度との整合性」と答えています。障害者にとって生存権にかかわる負担上限額が、障害者の「自立支援」とはまったく関係ない考え方で作られていることが浮き彫りになりました。

 政府は、「みんなで支える」ために「応能負担」から「応益負担」への転換を当然視します。

 しかし、現行の「応能負担」は支払い能力に応じて負担する仕組みです。ホームヘルプサービスや通所施設で利用者の95%が無料という現状は、障害者の所得そのものがきわめて低い実情にあるからにほかなりません。

 障害年金の大幅な引き上げなど所得保障の拡充こそ行うべきです。

 企業の法定雇用率の制度が導入されて三十年近くたつのに、大企業の七割が未達成であることが明らかになりましたが、こうした点を改善することこそ必要です。

 現状では、今回のような定率負担にすれば必要なサービスを受けられず、自立を阻害する深刻な事態になることは明らかです。

 定率負担が導入されている介護保険では、利用料負担が重すぎて低所得者が必要なサービスが受けられない事態が起こっています。健康保険本人負担では一割負担が導入されたあと、二割、三割へと引き上げられました。

生存権規定をふまえて

 もともと社会保障の負担は、憲法二五条が規定する生存権をふまえ、「能力に応じた負担」が原則です。

 「応能負担から応益負担への転換」に懸念を表明している障害者と家族の願いは、応益負担を当たり前とする、ゆがんだ社会保障の負担のあり方全体に、「異議あり」の声をあげるものです。

 審議では、自民党議員からも応益負担による負担増にたいし「当事者だけでなくわれわれも危ぐを感じる」との声があがるほどです。障害者と家族のとりくみが国会を動かしています。応益負担の導入に反対する声をさらに広げていきましょう。


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