2005年5月19日(木)「しんぶん赤旗」

主張

首相の靖国参拝

「やめます」と言うべきとき


 小泉首相が、自身の靖国神社参拝への国内外の批判にたいして、次のような国会答弁をしています。

 「戦没者全般に対して敬意と感謝の誠をささげるのがけしからんというのは、理由がわからない」「問題があるとは思っていない」「どのような追悼の仕方がいいかということを他の国が干渉すべきではない」「(A級戦犯も)罪を憎んで人を憎まずだ」(衆院予算委員会、十六日)

「反省」と両立しない

 靖国神社は、一般的な戦没者追悼施設ではありません。戦前・戦中は、軍管理の宗教施設として、国民を侵略戦争に駆り立てました。戦後も、戦争中と同様に「英霊の顕彰」を行い、侵略戦争を正しい戦争だったと宣伝しています。

 たとえば、「アジア民族の独立が現実になったのは、大東亜戦争緒戦の日本軍の輝かしい勝利の後であった」と、太平洋戦争をアジア解放の戦争であったかのように描いています。

 侵略戦争を起こした罪で処刑されたA級戦犯も「ぬれぎぬを着せられた『昭和殉難者』」だと説明。靖国神社後援の映画「私たちは忘れない」では、その「不当性を暴き…『戦犯』の無念をふりかえる」としています。

 日本共産党の不破哲三議長は、「日本外交のゆきづまりをどう打開するか 戦争終結60周年 アジア諸国との最近の関係をめぐって」と題した講演(十二日、時局報告会)で、靖国神社の実態を具体的に解明し、侵略戦争正当化という「特定の政治目的を持った運動体」だと指摘しました。

 靖国神社に首相が参拝することは、侵略戦争への反省とは両立しません。戦没者への追悼という気持ちを「日本の戦争は正しかった」という立場に結びつけることになります。国内だけでなく、日本の侵略で犠牲を強いられた諸国から、抗議、批判の声が上がるのは当然です。

 その批判にたいして「内政干渉」と言うのは間違いです。侵略戦争の誤りを二度と繰り返さないというのが、日本の国際的な公約であり、世界政治の共通の原点です。それを守るのか、無視し、破るのかということは、他国にも影響を与える重大な国際問題です。

 首相の靖国参拝は、「追悼の仕方」の問題ではありません。侵略戦争を正当化し、対外的に表明してきた「反省」とも矛盾する行動は、平和と友好を阻害します。国際的に批判が高まるのも、そのためです。

 A級戦犯について「罪を憎んで人を憎まず」というのも、侵略した日本の首相が使う言葉ではありません。侵略戦争によって犠牲を強いられた人々の気持ちを、いっそう深く傷つけます。

歴史を謙虚に受け止め

 小泉首相は、四月のアジア・アフリカ首脳会議で演説し、「植民地支配と侵略」で「アジア諸国の人々」に「多大の損害と苦痛を与えた」「歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切なる反省と心からのおわびの気持ち」を表明しました。この言明にそった行動が求められます。

 不破議長は、先の講演の最後に、三つの提案を行っています。(1)靖国神社参拝を、首相の任期中、きっぱりとやめること(2)「植民地支配と侵略」への反省を教科書に反映させること(3)アジア近隣諸国との平和の関係を探究する大戦略をもつこと。

 日本外交のゆきづまりを打開するための提起です。小泉首相は、真剣にこれにこたえるべきです。


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