2005年5月18日(水)「しんぶん赤旗」
「安全第一、上滑り」
仁比氏追及にJR西社長
参院国交委
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参院国土交通委員会は十七日、JR福知山線脱線事故をめぐる参考人質疑を行い、JR西日本の垣内剛社長、同徳岡研三専務・鉄道本部長、航空・鉄道事故調査委員会の佐藤泰生委員が出席しました。
事故のあったカーブ付近でスピード超過が常態化していたと複数の運転士がマスメディアで証言していることを委員が指摘したのに対し、徳岡専務は「当該線区の指導員、運転士三十人に聞き取りしたが、そのような事実はない」と否定しました。
日本共産党の仁比聡平議員は、JR側が事故区間での速度超過常態化を否定したことに対し「事故に至る重大な危険性を見逃したことを隠ぺいしようとしている。危険を感じていた現場運転士の声に耳を傾ければ事故は起きなかった」と批判。
ミスやトラブルの申告を不利な扱いや勤務評定に使ってはならないとする重大事故防止の大原則に反し、個人責任ばかり追及して社員を追い詰める「日勤教育」を改めるよう求めました。垣内社長は「大部分の教育は再発防止の趣旨を生かせたと思うが今後は一定の標準を設け適切な手段を考えたい」と答えました。
福知山線に新型の自動列車停止装置ATS―Pが未設置だった問題で仁比氏は、過去最高の五百八十九億円の利益を得て大阪駅改修に千五百億円も投資しようとしていることをあげ「お金がないから未設置だったのでなくやる気がないということだ」と指摘。管内全線でATS―Pなどの速度制御装置設置を約束すべきだと迫りました。
垣内社長は「安全第一でやってきたが、大事故が起きたのは上滑りや断片的なところがあったと反省している。設備投資についても安全性向上計画でいままでと違うことをやっていくと示したい」とのべました。
実態に合わぬダイヤ JR西認める
JR福知山線の脱線事故を受けて開かれた十七日の参院国土交通委員会は、JR西日本の垣内剛社長、徳岡研三専務らの参考人質疑を行い、ダイヤが運行実態に合っていないことを認めました。
事故原因の背景にある余裕時分のない高速運行のダイヤについて質問が集中しました。
徳岡専務は、福知山線は余裕時分が「尼崎まではゼロ(分)」と答弁。垣内社長は「現在のダイヤはきちっとしたもの」としながらも「遅れが常態化している部分もあるので、これから実態に合わせて直していきたい」と、実態に合わない運行ダイヤであることを認めました。
北側一雄国交相は福知山線のダイヤ見直しが運行再開の条件のひとつとしながら、「(ダイヤが事故を起こした)運転士の心理面にどういう影響を与えたのかは重大なことがらだ。余裕をもったダイヤは当然必要」とのべました。
報道されているスピード超過の実態を国土交通省は把握していたのかと問われた北側国交相は「そういう報道をこういう公式の場で言うのは慎重にしていただきたい」「制限速度を超えて回復運転せざるをえないといっている(運転士の)発言そのものがとんでもないものだ」と色をなして反論しました。
マスメディアが事故の背景として指摘している▽余裕時分のない高速運行ダイヤ▽安全対策への投資の低さ▽「日勤教育」▽利益至上主義―について、垣内社長はいずれも「直接的には事故原因ではない」と答弁。委員から「そうした社長の認識が問題だ」と批判を受けると、「背景要因にはあるかもしれないが、直接あったかどうかはわからないということを言った」と弁明しました。