2005年5月17日(火)「しんぶん赤旗」
主張
米議会調査委の勧告
基地の痛み 押しつけの不当
沖縄の祖国復帰三十三周年を迎えた十五日、県民二万三千人が普天間基地を包囲し、米軍の横暴勝手に抗議し、基地の縮小・撤去を強く訴えました。しかし、アメリカは、県民の願いに背を向け、基地の痛みを押しつける姿勢をつよめています。
米議会の、米軍再編を調査する海外基地見なおし委員会が、沖縄の海兵隊を海外に移すことに反対する中間報告書を公表したこともその一つ。普天間基地の航空部隊を嘉手納基地(沖縄県)と岩国基地(山口県)に移転し、他の海兵隊はすべて沖縄に残すべきだ、などと大統領に勧告しています。
沖縄に海兵隊を残す
報告書は、在日米軍の再編の主要三要素として、キャンプ座間(神奈川県)での再編型陸軍司令部の確立、岩国基地での海軍・海兵隊航空部隊の統合とともに、沖縄の基地態勢の調整をあげています。結論で「沖縄は東アジアにおける作戦能力の要(リンチ・ピン)だ。沖縄にある戦闘能力を削減することは、地域におけるアメリカの国家利益を危険にさらす」とのべ、「沖縄の普天間基地の海兵隊航空部隊は、嘉手納と岩国、あるいは嘉手納または岩国に移転すべきだ。残りの海兵隊はすべて沖縄に残すべきだ」と勧告しました。海兵隊を残すのでは、沖縄県民は米軍との危険な共存を強いられることにかわりはありません。
普天間基地のヘリ部隊や空中給油機部隊などを嘉手納基地や岩国基地に移すといいますが、嘉手納町では町長を先頭に、「これ以上の基地強化はごめんだ」という移転反対の運動を町ぐるみでおこなっています。岩国市民も、夜間離着陸訓練(NLP)の移転など基地強化にたいする反対運動を強めています。米議会が、「多少の再編によって、(沖縄の)地元住民の感情をよくする」というのは、沖縄県民を愚弄(ぐろう)するものです。県内外に基地負担をたらい回しにする提言など受け入れることはできません。
報告書は、日本に米軍を置く方が安上がりとしています。「歴史的に、日本では軍事建設予算は(米軍負担分は)わずかか、必要がない」―日本の税金による「思いやり予算」を米軍の権益と考えているかのような報告書は、アメリカの身勝手さをあらわしています。
報告書は、アメリカに都合のよい軍事態勢再編を日本に押しつける米政府を後押しするものです。日米両政府は、二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2会合)で、北朝鮮と中国の軍事動向を理由に日米共通戦略を確認しました。国防総省はこの日米共通戦略を根拠に、米軍の再編方針を押しつけています。普天間基地の名護市辺野古沖への移設に反対が強くなっているなかで、新たに、大型輸送機が利用可能な二千五百メートルの滑走路を沖縄に確保するよう要求しているのもその一つです。報告書の勧告と同一線上の動きです。
政府・議会一体の米軍再編の押し付けを許すわけにはいきません。
安保廃棄、基地撤去を
ブッシュ政権の米軍再編は、沖縄県民の基地の苦しみを軽減させるものではありません。小泉政権もアメリカいいなりです。日米の米軍再編協議に期待できないことは米議会調査委員会報告書でもあきらかです。
沖縄をはじめ厚木基地のNLPや低空飛行の爆音など、全国の基地の苦しみを解消するためには、基地の沖縄県内、国内のたらい回しではなく、日本からの基地撤去、米軍撤退を求めるのが一番早道です。