2005年5月16日(月)「しんぶん赤旗」
脱線直後 現場に支社長
人命救助指示せず
労働者 「活動加われず残念」
JR西日本
百七人の死者を出したJR福知山線の脱線事故当日(四月二十五日)、JR西日本が非常招集体制をとりながら、事故現場にいた橋本光人大阪支社長は、人命救助に携わるよう労働者に的確な指示をしていなかったことが十五日までに、労働者の証言などでわかりました。
支社長は事故発生の時間、点呼・立ち会いのために尼崎駅にいました。午前九時二十分にJRの一斉放送で事故を知った支社長は、駅長らと現場に急行。十分後には招集可能な労働者全員を集める「第一種の招集体制」を発令しました。
現場では、マンションの住民と付近の工場労働者、タクシー乗務員とともに、塚口施設関係のJR労働者十八人がいち早く乗客の救助活動に加わっていました。
非常招集でかけつけた電気関係や施設関係のJR労働者は十時すぎに、約百人いましたが、「立ち入り禁止」のロープが張られ、現場には入ることができませんでした。
現場で支社長は、作業服と安全靴、作業帽を深くかぶり、マスクをつけて、ウインドブレーカーを羽織っていたといいます。
十時十分、消防や警察と一緒に現地対策本部を設置しましたが、現場周辺に集合している労働者に人命救助の指示はありませんでした。JR労働者は、感電による二次災害の防止や、踏切警報機の回復、後続電車の乗客の安全誘導などに従事したものの、「最高責任者の大阪支社長が現場にいて、なぜ指示を出さなかったのか」と疑問の声が広がっています。
また、JR労働者が働く大阪・天王寺の大阪鉄道病院の医師や看護師にも、本社からは「待機命令」だけで、「現場にいきなさい」という指示はありませんでした。
橋本支社長は、今年度の「支社長方針」の第一の柱に「稼ぐ」をあげていました。事故当日、同駅での訓示は「収入については、駅は良好であったが、エージェント(関連事業)がだめだった。ゴールデンウイークを迎え、臨時売店などを活用して収入の確保をはかることだ。フロントサービスは、よくやっていると思うが、結果が出ていない。いろいろ工夫を」と利益優先を訴えました。
国労西日本本部の田中博文書記長は「地域の人たちが活動に携わってくれただけに、自分たちが活動に加われず残念だという声が組合員から相次いでいます。十三日の国会の集中審議でも、垣内社長は『稼ぐ第一の支社長方針』を撤回しませんでした。『命令と服従』『上位下達』の経営体質を改めることが、いま強く求められていると思います」と話しています。