2005年5月16日(月)「しんぶん赤旗」
イラク西部で米軍無差別攻撃を拡大
「動くものすべてに銃撃」
現地医師
【カイロ=小泉大介】イラク西部にあるシリア国境近くの都市カイムで七日夜から大規模な「武装勢力掃討」作戦を展開してきた米軍は十四日、武装勢力百二十五人を殺害し作戦を成功裏に終了したと発表しました。しかし作戦は無差別攻撃である上、近隣にも拡大しています。米軍は海兵隊を中心とした約千人の部隊でカイムを包囲し、F16戦闘機も動員し無差別爆撃を繰り返しました。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは十四日、カイム総合病院のハイダル医師への電話取材をもとに現地の状況を伝えました。
それによると、カイムでは空爆に加え、米軍兵士が高い建物の屋上に展開。米軍の包囲を破ろうとする者だけでなく、動くものすべてに銃撃を加えています。がれきの下には多数の住民の遺体が残されたままですが、攻撃の激しさで遺体を収容することができません。食料や水、医薬品は底を尽き、電話回線も寸断されています。
現地からの報道によると、米軍は十四日、カイムの東方数キロにあるオベイディも包囲し、カイムと同様の無差別軍事作戦を開始しました。現地病院の医師は「状況は壊滅的だ。ここには医薬品も医療器具もない。救急車を出せば、米軍に攻撃される恐れがある」と告発しました。
カイムとその周辺の作戦では、抵抗勢力側も激しく応戦しており、七日から十四日までに少なくとも米兵九人が死亡、四十人が負傷しています。
昨年十一月のファルージャ総攻撃以来の今回の大規模作戦に、米軍に対する非難はもちろん、作戦を黙認し十三日には非常事態宣言の延長を決定したイラク移行政府への批判も高まっています。
イラクの政治評論家ライス・ラッザーク氏はアルジャジーラに対し「今回の攻撃はイラク国民と政府との溝を深めるだけであり、政府は対話と合意による問題の解決に力を尽くさなければならない」と強調しました。